「世界一」の座、奪還へ! 女子TOP日本代表が選手選考会を実施
2024年「第17回女子ワールドカップ」まで「続投」が決まった宇津木麗華ヘッドコーチ
選手選考会は「実戦形式」で「真剣勝負」が繰り返された
将来有望な高校生ピッチャーもリストアップされ、選考会に参加した
すでに「日本代表」を経験している選手たちは「一味違う」プレーを見せた
「日本代表」は伝統的に堅守を誇っているだけに「守備」も重要な選考要素となる
選手たちのプレーの一挙手一投足を見守る宇津木麗華ヘッドコーチ(右)、宗方貞徳女子強化委員長(中央)、松田和広選手強化本部長(左)
「東京2020オリンピック」金メダリストが選考会に参加・サポート(写真左から山崎早紀氏、山田恵里氏、渥美万奈氏、山本優氏)
オリンピック金メダルの「レガシー」を受け継ぎ、継承・伝承していく「後継者」の出現に期待!
去る1月23日(月)~25日(水)の3日間にわたり、宮崎県日向市・大王谷運動公園野球場・サンドーム日向を会場に「令和4年度 女子TOP日本代表候補選手選考会」が実施された。当日は「10年に一度」という大寒波の影響による悪天候で、選考会2日目は南国・宮崎では珍しく吹雪のような雪に見舞われる等、厳しい状況下での開催となったが、宮崎県協会並びに日向市の皆さんの熱意と尽力もあり、無事に予定された全日程を消化することができた。
この選考会には、11月20日(日)に開催された(公財)日本ソフトボール協会「令和4年度 第7回理事会」で2024年の「第17回女子ワールドカップ」までの「続投」が正式に決定し、引き続き「女子日本代表」のヘッドコーチとしてチームの指揮を執ることになった宇津木麗華ヘッドコーチ、同協会選手強化本部会・女子強化委員会によってリストアップされた30名の選手が参加して実施された。
今回の選考会は、すべて「実戦形式」で行われ、選考会に参加した全選手が2チームに分かれ、「真剣勝負」。対戦を繰り返す中で「日本代表」として「世界の舞台」に立つにふさわしい選手か否か見極めるべく、厳しい選考が行われた。
今回の選考会に参加した選手の顔ぶれを見ていくと、投手が12名ともっとも多く、しかも高校生4名、大学生1名の「期待の若手」「次代を担う有望株」をリストアップ。昨シーズンの春の全国高等学校選抜大会、夏のインターハイ、秋の国体の優勝投手、インカレ優勝投手を含む「将来有望」なピッチャーが顔を揃え、ここにすでに「日本代表」に選出された経験・実績を有するピッチャー2名、「世界最高」の競技レベルを誇るJD.LEAGUE所属のピッチャー5名を含めた計12名のピッチャーが選考に臨んだ。
宇津木麗華ヘッドコーチは、「国内での実績=世界で通用する、という図式が必ずしも成り立つとは限らない。特に、将来を見据えてリストアップした高校生は、ゴムボールから革ボールへの対応・適応も考えなければならず、高校生の大会で輝かしい結果・成績を残しているからといって、それがそのまま通用するほど、『世界の舞台』は甘くない。将来性や今後の伸びシロを考え、しっかりと見極めていく必要があり、現時点での力量以上に今後どれだけの成長が見込めるかを加味した選考になる」と語ると同時に、「素材として楽しみなピッチャーは多い。この選考会への参加を一つのステップとし、成長の契機としてもらえれば」と今後の成長に期待する言葉も聞かれた。
その一方で、キャッチャーを含めたバッテリーに「例えば、すでに世界の舞台で実績があり、キャリアもある上野由岐子や後藤希友と、今回の選考会に参加しているピッチャーでは球速も違うし、持っている球種も違う。それと同じリード、配球を画一的に繰り返すばかりでは、それぞれのピッチャーの持ち味を引き出すことはできない。個々のピッチャーの一番の武器となるボールは何なのかを見極め、それを最大限に活かすこと。そのボールを活かすためにどうピッチングを組みたてたらいいのか、どんな配球が効果的なのか考えること、それができないとキャッチャーは務まらない。力のあるピッチャーは配球等工夫しなくても相手打者を抑え込むことができる。それがいつもいつも通用するとは思わないでほしい」と語り、「ピッチャーもただキャッチャーのサイン通りに投げるだけでなく、自分自身を活かすために、自分の意思で時には勇気をもってキャッチャーのサインに首を振ることも必要になる。セオリー通り、パターン化した配球だけで通用するのは本当に力のあるピッチャーだけ。球速は90km/hそこそこ、チェンジアップしかもっていなくても、そのチェンジアップが120km/hの快速球にも負けない武器として使える場合もある。使えるボール、使えないボールを冷静に取捨選択し、勝負するボールと見せ球にするボールをうまく組み合わせていくことができる『投球術』を持たなければ代表レベルで活躍することはできない」と敢えて苦言を呈する場面も見られた。
その中では、すでに「日本代表」としてプレーした経験を持つピッチャーが「貫禄」すら感じさせるピッチングを披露。「経験値の違い」を見せつける「圧巻」のピッチングを見せていた。
野手に目を向けると、JD.LEAGUEで「首位打者」「本塁打王」「新人賞」に輝くタイトルホルダーがズラリと顔を揃えていたが、ここでもすでに「日本代表」を経験している選手たちが「一味違う」プレーを見せてくれた。
ここにどれだけ「新しい力」が絡んでくるか……実績のある選手たちを脅かす存在が出てこないことにはチーム力を底上げすることはできないし、新陳代謝、世代交代も進まない。「東京2020オリンピック」で後藤希友という「ニュースター」が出現し、一気に金メダルまで突っ走ったように、野手にもそんな「新たなスター」が誕生すれば、チームは一気に活性化する。
野手に関しても宇津木麗華ヘッドコーチは、「日本の指導はどうしても欠点を指摘し、それを矯正・克服することに主眼が置かれ、走・攻・守すべてにバランスの取れた『完璧な選手』を求める傾向がある。ともするとそれが行き過ぎてしまい、目立った欠点もないかわりに突出した個性、特徴の感じられない小器用で小さくまとまってしまっている選手が多い気がする。選手それぞれにその選手にしかない魅力、個性、特徴があるのだから、まずはそれを活かし、伸ばすことから指導した方がいいと感じる。『自分にしかない武器』を身につけること、『長所』を磨くことから始めることで前向きでポジティブな気持ちになり、その武器を活かすためにどうすればいいか考え始める。例えば、高めに強く、自信があれば、低めのボールはヒットにできないまでもファウルにして逃げる。内角が得意なら外角のボールは見逃したり、空振りするのではなく、せめてファウルする技術を身につける。そうすることで『次のチャンス』が生まれてくる。逆に高めも低めも内角も外角も完璧に打つこと、何でもできることを求めるあまり、自分を見失い、本来持っていた能力や魅力を自ら手放してしまっている選手が多いように感じる。『これだけは絶対!』というものも一つ持つこと。固有の、突出した能力を磨くことを最優先に考え、それができてから苦手なところを少しずつ消していく、得意なものを最大限に磨いた上で不得意なことにも取り組み、克服をめざす……そういった方法論で選手育成を図った方が、スケールの大きな、個性豊かな選手を育てることにつながるのではないか。自分を見つめ、冷静に自己分析することは必要だとしても、自分はここがダメだ、あそこが苦手だ、とマイナス思考の減点主義に陥ってしまうとプレーに積極性や思い切りが失われてくる。逆に、これだけは負けない、ここが自分の強みだ、と自信を持っている選手は、プラス思考で何事にも前向きに取り組むことができる」と、選手指導・育成に関する着眼点、発想の転換の必要性に言及し、強調する場面もあった。
また、今回の選考会には、昨シーズン限りで現役引退を表明した「打のレジェンド」山田恵里、「東京2020オリンピック」での金メダルを置き土産に、一昨年に現役を退いた渥美万奈、山本優、山崎早紀の四氏がサポートスタッフとして参加。これは(公財)日本ソフトボール協会が推し進めるオリンピアンを指導者として育成していこうという施策の一環で、オリンピックという世界最高の舞台で活躍し、金メダル獲得という偉業を成し遂げたオリンピアンの「経験」をレガシーとして遺し、受け継ぎ、継承・伝承していくことを期待してのものである。
選考会に参加した選手たちに、「世界の舞台」で活躍し、金メダルを手にした者でなければ伝えることのできない「貴重な経験」を、直接伝授する機会が設けられたことに「大きな意義」があり、こういった取り組みがソフトボール界の発展につながるはずである。
あるいは、このオリンピアンの中から、「名将」宇津木麗華ヘッドコーチに続く、指導者が生まれ、育っていってくれることにも期待したいところだ。
今後は、今回の選考会に参加した選手と日本代表候補認定選手(東京2020オリンピック代表選手7名)の中から、20数名程度の『日本代表候補選手』を選定し、まずは予備登録のエントリー期限が3月に迫っている杭州アジア競技大会(新型コロナウイルスの影響で1年延期)、4月に開催が予定されているワールドカップの予選を兼ねたアジアカップ、両大会への参加選手を決定し、その後も強化事業ごとに参加選手を選定していくことになる。
2023年の年明けにあたり、「新たなスタート」を切った女子TOP日本代表。「選考会」である以上、合否の明暗は分かれ、その「現実」を容赦なくつきつけられる。それでも……今回の選考会にリストアップされたという「事実」は、「日本代表」が手の届くところにあることを意味している。今回の選考に漏れた選手はもちろん、JD.LEAGUE等で活躍が顕著な選手については随時見直し・入替を図っていく予定であるとも聞く。常に「ALL JAPAN」体制で「ベストチーム」を編成していくために……選手たちはもちろん、協会も「チャレンジ」を続けていかなくてはならない。
選考会参加推薦選手(守備別50音順)
No. | 守備 | 氏名 | 支部 | 所属 |
1 | 投手 | 伊東 杏珠 | 東京 | 目黒日本大学高等学校 |
2 | 〃 | 勝股 美咲 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
3 | 〃 | 後藤 実緒 | 愛知 | 星城高等学校 |
4 | 〃 | 鹿野 愛音 | 福岡 | タカギ北九州 |
5 | 〃 | 曽根 はん奈 | 群馬 | 太陽誘電 |
6 | 〃 | 辻 奈奈 | 佐賀 | 佐賀女子短期大学付属佐賀女子高等学校 |
7 | 〃 | 寺田 愛友 | 群馬 | 太陽誘電 |
8 | 〃 | 中山 日菜子 | 岐阜 | 大垣ミナモ |
9 | 〃 | 廣瀬 夏季 | 埼玉 | 戸田中央総合病院 |
10 | 〃 | 丸本 真菜 | 神奈川 | 神奈川県立厚木商業高等学校 |
11 | 〃 | 三輪 さくら | 愛知 | トヨタ自動車 |
12 | 〃 | 山下 千世 | 石川 | 金沢学院大学 |
13 | 捕手 | 上林 藍子 | 群馬 | 太陽誘電 |
14 | 〃 | 切石 結女 | 愛知 | トヨタ自動車 |
15 | 内野手 | 石川 恭子 | 愛知 | トヨタ自動車 |
16 | 〃 | 大川 茉由 | 栃木 | ホンダ |
17 | 〃 | 大國 結華 | 京都 | SGホールディングス |
18 | 〃 | 片岡 僚子 | 愛知 | 中京大学 |
19 | 〃 | 工藤 環奈 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
20 | 〃 | 坂本 結愛 | 神奈川 | 日立 |
21 | 〃 | 下山 絵理 | 愛知 | トヨタ自動車 |
22 | 〃 | 須藤 志歩 | 愛知 | 豊田自動織機 |
23 | 〃 | 炭谷 遥香 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
24 | 〃 | 中溝 優生 | 群馬 | 太陽誘電 |
25 | 外野手 | 伊波 菜々 | 愛知 | トヨタ自動車 |
26 | 〃 | 唐牛 彩名 | 神奈川 | 日立 |
27 | 〃 | 川村 莉沙 | 愛知 | デンソー |
28 | 〃 | 塚本 蛍 | 栃木 | ホンダ |
29 | 〃 | 中川 彩音 | 愛知 | 豊田自動織機 |
30 | 〃 | 藤本 麗 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
※各選手の所属先は選手選考会参加時のもの |
日本代表候補認定選手 ※「東京2020オリンピック」代表選手7名
No. | 守備 | 氏名 | 支部 | 所属 |
1 | 投手 | 上野 由岐子 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
2 | 投手 | 藤田 倭 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
3 | 投手 | 後藤 希友 | 愛知 | トヨタ自動車 |
4 | 捕手 | 我妻 悠香 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
5 | 内野手 | 内藤 実穂 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
6 | 内野手 | 川畑 瞳 | 愛知 | デンソー |
7 | 外野手 | 原田 のどか | 群馬 | 太陽誘電 |
※各選手の所属先は選手選考会実施時のもの |
「令和4年度 女子TOP日本代表候補選手」並びに各大会・各強化事業別の参加選手は決定次第、このオフィシャルホームページで発表する予定である。 |