今年も恒例の「日韓ジュニアスポーツ交流事業」が実施された
親善交流試合を中心に、両国の競技力の向上がめざされた
今回は女子GEM2(U16)日本代表チームが派遣され、強化に励んだ
「一つ上」のカテゴリーである韓国女子U19代表チームに挑戦!
現地の「大学生」とも対戦。全力で戦いを挑んだ
6試合の親善交流試合を実施。熱戦を展開!
ソフトボールを愛する選手たちに「国境」はない!
ソフトボールを心から楽しむ「仲間」を増やそう!!
いつの日か……世界選手権、オリンピックの舞台で再会を!
「日韓ジュニアスポーツ交流事業」(訪韓)が今年も開催され、日本・韓国の両国が「ソフトボール」を通じて交流。互いの友好親善を深め、競技力向上を図った。
この「日韓ジュニアスポーツ交流事業」は、アジア近隣諸国とのスポーツ交流を促進し、両国の友好親善と競技力向上を目的に「相互派遣方式」で実施されており、2001年からスタートし、今年で17回目の開催となる。
この「日韓ジュニアスポーツ交流事業」は、これまで女子U19日本代表(現・女子GEM3(U19)日本代表や全国高校女子選抜大会の優勝チームが派遣されていたが、今回から女子GEM2(U16)日本代表チームを派遣。「ひとつ上」のカテゴリーとなる韓国女子U19代表チームや大学生との試合も組まれた。
また、この訪韓を受けて、11月13日(月)~18日(土)には韓国女子U19代表チームが来日。岐阜県揖斐川町を訪れ、今回韓国を訪問した女子GEM2(U16)日本代表チームとの親善交流試合を中心とした「受入事業」が行われる予定である。
女子GEM2(U16)日本代表は、9月1日(金)の午後、JISS(国立スポーツ科学センター)に集合。「チーム」としての初練習を行った後、夜にはミーティングを行い、「日本代表」として常に注目される立場となること、代表選手としての自覚ある言動が求められ、「JAPAN」のユニフォームを身にまとい戦うことの意味等がコーチングスタッフから選手一人ひとりにじっくりと説かれた。
翌2日(土)、女子GEM2(U16)日本代表は早朝、成田空港を出発。韓国・金浦空港へ向け、飛び立ち、今回の交流事業の会場となる原州市に到着した。
訪韓時の親善交流試合は計6試合の予定が組まれ、9月3日(日)から試合がスタート。午前中1試合、午後1試合のダブルヘッダーで行われ、第1戦は韓国U19代表チームと対戦。両チーム無得点で迎えた4回表、女子GEM2(U16)日本代表チームは3番・西窪千尋、4番・松久歩未の長短打で1点を先制すると、続く5回表には7番・細谷日向の二塁打を口火に9番・横田麗羅のタイムリー等で2点を追加。6回表には4番・西窪千尋、6番・樫本心美の二塁打等で4点を加え、7点を奪うと、守っては先発・馬場千宙、2番手・吉村菜津子、3番手・渡部翠里とつなぐ投手リレーで韓国女子U19代表チームを完封。7-0の6回コールド勝ちを収めた。
第2戦は何と現地の大学生チームと対戦。やはり「大学生」との差は大きく、3回裏に守備の乱れ、四球等で二死二・三塁のピンチを招き、タイムリーを浴びて2点を失い、5回裏にも2本の長短打等で2点を奪われ、0-4とリードされると、女子GEM2(U16)日本代表チームは6回表にようやく反撃。9番・中辻美空、1番・井上美樹の連打からチャンスをつかみ、3番・馬場千宙のライト前へのタイムリーで二者を迎え入れ、2点を返したが反撃もここまで。「大学生」の力に屈し、2-4で敗れた。
翌日(9月4日/月)、この日もダブルヘッダーとなり、韓国女子U19代表チームと対戦。第1試合は3回表に4本の長短打を集中され、2点を先制される試合展開となったが、女子GEM2(U16)日本代表チームはその裏、すぐに反撃。相手守備の乱れに乗じて2点を返し、同点に追いつくと、4回裏には4番・吉村菜津子の内野安打からチャンスをつかみ、2つの内野ゴロで二死ながら走者を三塁へ進めると、8番・寺島咲への2球目がパスボールとなり、三塁走者が還り、1点を勝ち越し。5回裏には、3番・細谷日向のライト前タイムリー、5番・松本琴和のレフトオーバーのタイムリースリーベース等で2点を追加。5-2とリードを奪い、「勝利は目前」と思われたが、最終回、韓国女子U19代表チームの猛反撃を受け、4安打を集中され、3点を奪われ、5-5の同点に。ここで予定された時間に達し、7回裏の女子GEM2(U16)日本代表チームの攻撃は行わず、5-5の同点のまま、試合を打ち切り、引き分けとなった。
第2試合は、再び韓国女子U19代表チームと対戦。女子GEM2(U16)日本代表チームが2回表、4安打を集中し、一挙4点を奪って先手を取れば、韓国女子U19代表チームもその裏、すぐに2点を返し、反撃。序盤から激しい点の取り合いとなったが、女子GEM2(U16)日本代表チームは4回表、代打・中辻美空、1番・樫本心美の長短打で1点を追加。5回裏には、6番・松本琴和にツーランホームランが飛び出す等、打者一巡の猛攻で大量5点を加え、二桁10得点を叩き出し、先発・渡部翠里、馬場千宙が韓国女子U19代表チームに6点を奪われながらも、打線の援護もあり、10-6で逃げ切り、2勝目を挙げた。
9月5日(火)もダブルヘッダーとなり、第1試合は地元・大学生と再戦。序盤3点のリードを奪われ、「やはり大学生の壁は厚いか……」と思われたが、2回裏、女子GEM2(U16)日本代表チームは二死走者なしから7番・西窪千尋、8番・細谷日向の長短打で1点を返し、反撃開始。3回裏には、1番・中辻美空のセンターオーバーのソロホームラン、3番・松本琴和の三塁打とパスボールで2点を返し、3-3の同点に追いつくと、5回裏には、代打・横田麗羅のセンター前ヒットを口火に、2番・菱谷香実から7番・西窪千尋まで怒涛の6連続長短打。8番・細谷日向もキッチリとレフトへ犠牲フライを打ち上げ、打者10人を送る猛攻で一挙6点を奪い、6回裏にも1番・中辻美空、2番・菱谷香実の連打からチャンスをつかみ、相手守備の乱れから1点を追加。10-3の6回コールドで「大学生」相手に見事にリベンジを果たし、「大金星」を挙げた。
第2試合は韓国女子U19代表チームと対戦。最終戦となるこの試合は、女子GEM2(U16)日本代表チームが「気合」を入れ直し、韓国女子U19代表チームを序盤から圧倒。初回、相手守備の乱れから先取点を挙げると、2回裏には5番・松久歩未のレフト前ヒットからチャンスをつかみ、7番・吉村菜津子の二塁打、1番・寺島咲のバント安打等で3点を追加。3回裏には5番・松久歩未、6番・細谷日向、7番・吉村菜津子の3連続長短打等で3点を加え、4回裏には4番・樫本心美、5番・松久歩未、代打・馬場千宙、7番・吉村菜津子の4連続長短打、再出場の8番・横田麗羅のレフトへの犠牲フライで大量6点を追加。13得点の猛攻を見せると、先発・山下千世、2番手・松本琴和、3番手・渡部翠里とつなぐ投手リレーで韓国女子U19代表チームを完封。13-0の4回コールドで最終戦を勝利で飾り、4勝1分1敗で6試合の親善交流試合を終えた。
また、試合だけでなく、「合同練習」や「選手交流会」も催され、グラウンド外でも互いの交流を深め、言葉は十分に通じなくても、身振り手振り、ゼスチュアを交え、ソフトボール談義に花を咲かせた。
今年で17回目の開催となった「日韓ジュニアスポーツ交流事業」。今回から完全な「強化」の事業となり、女子GEM2(U16)日本代表チームが派遣され、「一つ上」のカテゴリーである韓国女子U19代表チームや地元の大学生との親善交流試合を行い、強化に励んだ。
すでに女子GEM1(U14)日本代表チームで台湾遠征を経験している選手、今夏の「カナダカップ ショーケースゴールドトーナメント」で「優勝」を勝ち獲った選手が多数を占める今回の女子GEM2(U16)日本代表チームにとっては、「一つ上」のカテゴリーであるU19代表チームや地元の大学生が相手であっても臆することなく戦い、互角以上の戦いを見せてくれた。
早くからこういった国際経験を積んだ選手たちが、今後、女子TOP日本代表チームを「頂点」とする強化システムの中で、どんな成長を遂げていくのか、楽しみでならない。
もちろん、この事業の趣旨・目的は、競技力向上だけでなく、言葉、民族、文化、生活習慣等の違う者同士が、「ソフトボール」という競技を通じて心を通わせることにもあり、その中で互いを「仲間」として認め合い、高い目標に向かって切磋琢磨していくことにある。その意味では、たとえ言葉や文化、生活習慣が違っても、「ソフトボール」という競技を一つのツールとして、言葉の違いなど気に留めることもなく、積極的にコミュニケーションをとり、アッという間に仲良くなっていく選手たちの姿には、両国の「明るい未来」を確信する光景を見せてくれた。
ソフトボールに「情熱」を注ぎ、この競技を心から「愛する」気持ちがあれば、そこに国境はなく、「国際交流」「国際親善」という面では、この事業が大きな役割を果たしている。
2020東京オリンピックで「野球・ソフトボール」の「復活」が実現し、それを2024年以降も継続させていくための「ソフトボールの課題」が「世界における競技の普及」であることは変わっておらず、日本に求められるのは「アジアにおける仲間作り」が喫緊の課題である。アジアの仲間たちと手を携え、ともに歩みを進め、アジアでの地盤・土台をより強固なものとすると同時に、「アジアから世界へ」その輪を広げていくことが「課題」となっている。
この韓国をはじめ、女子GEM1(U14)日本代表チームの強化遠征を通じて交流のある台湾との「交流事業」は、それらを実現するための「貴重な事業」としてとらえていく必要があり、この「交流事業」を一つの足掛かりとして、その他の国々へ……その「輪」を広げていかなければならない。
女子ソフトボールの現状は、国際大会での結果・成績を見る限り、アジアでは「日本の一人勝ち」状態にあり、世界に目を広げてみても日本とアメリカのみが「頂点」を争うような状況が続いている。しかし……アジアの現状、世界的なソフトボールの「普及」という、「ソフトボールの課題」を考えれば、いくら日本が強くても、優勝を重ねても、決して手放しで喜べる状況ではないともいえる。
もっともっと「仲間」を増やし、真に競い合える「ライバル」がアジアに出現すること。そして、その「輪」を「アジア」から「世界」へと広げていくこと。そのためには、いつか「あの日韓交流事業がソフトボールのアジアへの、世界への、普及・浸透への第一歩だった」と評価されるような事業へと発展させていく必要があり、この「交流事業」を一つの契機として、世界中へその「輪」を広げていかなければならない。
No. | 守備 | 氏名 | 支部 | 所属 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 投手 | 馬場 千宙 | ばば ちひろ | 大阪 | 岸和田市立岸城中学校 |
2 | 〃 | 松本 琴和 | まつもと ことわ | 神奈川 | 川崎市立野川中学校 |
3 | 〃 | 山下 千世 | やました ちせ | 静岡 | 城南静岡中学校(FSトップファイヤーズ) |
4 | 〃 | 吉村 菜津子 | よしむら なつこ | 神奈川 | 横浜市立万騎が原中学校 |
5 | 〃 | 渡部 翠里 | わたなべ みどり | 秋田 | 能代市立東雲中学校 |
6 | 〃 | 井上 美樹 | いのうえ みき | 兵庫 | 高砂市立宝殿中学校(明石Pクラブ) |
7 | 捕手 | 西窪 千尋 | にしくぼ ちひろ | 鹿児島 | 神村学園中等部 |
8 | 〃 | 松久 歩未 | まつひさ あゆみ | 岐阜 | 揖斐郡大野町立大野中学校(岐阜NEXUS) |
9 | 野手 | 泉 彩音 | いずみ あやね | 広島 | 三原市立第五中学校(広島プリンセス) |
10 | 〃 | 樫本 心美 | かしもと ここみ | 大阪 | 岸和田市立岸城中学校 |
11 | 〃 | 田村 涼 | たむら すず | 高知 | 高知市立愛宕中学校 |
12 | 〃 | 寺島 咲 | てらしま さきか | 長野 | 茅野市永明中学校(TEAMNAGANO) |
13 | 〃 | 中辻 美空 | なかつじ みそら | 京都 | 京都市立嵯峨中学校 |
14 | 〃 | 菱谷 香実 | ひしたに こうみ | 福岡 | 福岡市立金武中学校(レッドドリームズ) |
15 | 〃 | 細谷 日向 | ほそや ひなた | 神奈川 | 横浜市立金沢中学校 |
16 | 〃 | 山口 志帆 | やまぐち しほ | 宮崎 | 延岡市立南中学校 |
17 | 〃 | 横田 麗羅 | よこた れいら | 高知 | 高知市立愛宕中学校 |
No. | 役職 | 氏名 | 支部 | 所属 |
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1 | チームリーダー | 渡辺 祐司 | 京都府 | 京都市立樫原中学校 |
2 | 強化担当 | 奥村 誠 | 石川県 | 石川県立寺井高等学校 |
3 | ヘッドコーチ | 吉田 央 | 鳥取県 | 北栄町立北条中学校 |
4 | アシスタントコーチ | 阿部 祐子 | 北海道 | 石狩市立花川中学校 |
5 | 総務兼トレーナー | 小野 多恵子 | (公財)日本ソフトボール協会 | |