~世界の頂点が狙える位置へ『復活』! ここを『新たなスタート(ターニングポイント)』に !! ~
6月13日~23日、チェコ・プラハにおいて開催された
「第16回世界男子選手権大会」の激闘を振り返る!
男子TOP日本代表は6月5日に日本を出発
オランダで直前合宿をはり、決戦の地・チェコへ
入った後も「順調」「万全」に最終調整を行った
6月13日、いよいよ大会が開幕!
初戦のメキシコ戦にキッチリ勝利し、白星発進!
その後も「快調」に「連戦連勝」!
7戦全勝で予選Aグループ1位通過を果たす
決勝トーナメントでも「快進撃」は続く‼
王者・ニュージーランドを撃破し、ファイナル(決勝)へ
ファイナル(決勝)では「難敵」アルゼンチンと再戦。
チーム一丸、延長10回に及ぶ「死闘」を繰り広げたが…
最後はアルゼンチンの「驚異的な粘り」に屈し、
2-3で敗戦。しかし、堂々の準優勝を飾った
アルゼンチン・ウエムル・マタの「クレバーなピッチング」が光った
ファイナル(決勝)。日本打線は合計「17三振」を奪われることに…
アルゼンチンの「初優勝」で大会は閉幕
「次代のエース」小山玲央が「期待通り」活躍した日本。
この準優勝をターニングポイントに、世界の上位常連国へ!
今回4位に終わり、メダルを逃したニュージーランド。
「次代を担うべき選手」の成長・活躍が求められる
オーストラリアも7位に沈んだが…次回は巻き返してくるはず
アルゼンチンに唯一敗れたことで、第3位に終わったカナダ。
「ベテラン健在」ではあるが、「世代交代」に不安を覗かせる
世界選手権(ワールドカップ)をさらに盛り上げ、
「男子ソフトボール」の存在をもっともっとアピールしたい!
日本にとっても、世界にとっても、
ここはゴールではなく…「新たなスタート」なのである
去る6月13日(木)~23日(日)、チェコ・プラハにおいて開催された「WBSC第16回世界男子ソフトボール選手権大会(※大会結果はこちら ※大会オフィシャルサイトはこちら )」で男子TOP日本代表が堂々の「準優勝」を飾り、2000年(第10回大会:準優勝)以来となる「銀メダル」を獲得!
大会にはホスト国・チェコをはじめ、前回優勝「WBSC(世界野球ソフトボール連盟)男子ソフトボール世界ランキング1位」の「ソフトボール王国」ニュージーランド、また、そのニュージーランドとともに「世界の3強」と評されるオーストラリア(前回準優勝)、カナダ(前回第3位)ら「世界の強豪16チーム」が参戦。まず参加16チームを2つのグループに振り分け(※日本はニュージーランド、アルゼンチン、チェコ、メキシコ、ボツワナ、フィリピン、キューバと同じAグループに入った)、それぞれシングルラウンドロビン(1回総当たり)の予選リーグを実施。各グループの上位4チームにより決勝トーナメントを行い、最終順位を決定する試合方式で覇が競われた。
このところ「世界の厚く高い壁」に阻まれ、世界選手権の舞台では「5大会連続5位」という成績に終わっていた男子TOP日本代表であるが、今回は「世界に通用する若手の台頭」もあって戦前の予想以上に「躍進」!! 予選リーグから全勝(無敗)のまま決勝トーナメント・ファイナル(決勝)へ駆け上がり、ファイナル(決勝)でも序盤に2点を先制する試合展開。最後は惜しくも…「中南米の難敵」アルゼンチンの「強かさ」「驚異的な粘り」に屈し、延長10回タイブレーカーに及ぶ「死闘」の末“2-3で敗れる”形となりはしたが、これまでの「5位の壁」を見事ぶち破り、「19年ぶりのメダル獲得」を果たしてみせた。
ここでは、その男子TOP日本代表の「熱く燃えた戦いの軌跡」を辿るとともに、今大会をじっくりと総括。日本のみならず「他の強豪国の現況等」もふまえ、今後の「世界男子選手権(※次回から『男子ワールドカップ』に大会名称を変更)の展望」をまとめてみたいと思う。
◎メダル獲得へ「自信」!
男子TOP日本代表は6月5日(水)に日本を出発。出発前日となった4日(火)には千葉県成田市のホテル日航成田において「結団式・壮行会」が施された。代表選手の決意表明では一人ひとりがしっかりと「自分の言葉」で抱負・意気込みを語り、ときにユーモアなコメントで周囲の笑いも誘う等、「爽やかに」「和やかに」会が進行。会場全体が非常に「良い雰囲気」に包まれ、随所に「チームの一体感」を感じさせてくれた。
日本を発った男子TOP日本代表は、大会本番前にオランダで直前合宿をはり、今大会の「出場国(優勝候補)」であるニュージーランド、オーストラリアらとテストマッチを実施。2月のニュージーランド遠征(※レポートはこちら)に続いてここでもライバルを立て続けに「撃破」する等「好調」を持続させ、メダル獲得への「可能性の大きさ」を感じさせると、決戦の地、チェコ・プラハ入りした後の練習(最終調整)でも終始ノビノビとプレー。互いのコミュニケーションを大切にし、ときに刺激し合い、支え合いながら、「個々のコンディション&チーム力を向上させる姿」が目に留まった。
◎大会開幕! 予選リーグから「無傷」の「快進撃」!!
6月13日(木)、いよいよ「WBSC第16回世界男子ソフトボール選手権大会」が開幕。大会初日はオープニングセレモニー&開幕戦(ニュージーランド vs チェコ)が行われ、「王者」ニュージーランドの快勝(※9-0で「開催国」チェコに勝利)で熱戦スタート。
男子TOP日本代表も初戦のメキシコ戦を、打っては大石司の先制ソロホームラン、井上知厚の勝ち越しソロホームラン、投げては松田光の被安打2・奪三振11の力投で2-1とモノにし、「白星スタート」を切ると【予選リーグ第1戦/日本 2-1 メキシコ】、その後「快調」に「連戦連勝」!
【予選リーグ第2戦/日本 8-4 アルゼンチン】
初戦(メキシコ戦)で快投をみせた松田光が、今度は「打撃」で4打点(※ホームラン1本、タイムリー2本)を叩き出す等「大活躍」! 昨年のインターコンチネンタルカップ/アルゼンチン戦でも結果を残した「アルゼンチンキラー」池田寛人も3打点(※タイムリー2本)をマークし、チームの勝利に大きく貢献!! 8-4で勝利を収め、予選リーグ2勝目を挙げた。
【予選リーグ第3戦/日本 4-3 チェコ】
今大会「初登板」となった高橋速水が初回に「まさか」の3失点。“地元の大声援”にも後押しされたチェコ打線の前に「1回もたず降板」するという劣勢を強いられたが…この後下を向くことなく、打線が援護! 松田光、八角光太郎のタイムリー等で4回裏についに同点に追いつくと、5回裏には宮路充の左中間へのヒットを足場に一死三塁のチャンスを作り、片岡大洋が逆転のセンター前タイムリー!!
守っては、今大会「絶好調」の「投打の大黒柱」松田光が初回途中でロングリリーフに立ち、6回2/3を「ノーヒットピッチング」。2回以降チェコに追加点を許さず、4-3で勝利し、開幕3連勝を飾った。
【予選リーグ第4戦/日本 10-0 フィリピン】
2回裏、宮路充の先制タイムリーを皮切りに「打線」が「爆発」! 「頼れるベテラン」松田光、浦本大嗣のタイムリー、3回裏には「次代のリーダー候補」黒岩誠亥に「超特大」のツーランホームランが飛び出す等、相手を一蹴し、10-0と余裕の4回コールド勝ち!! 予選リーグ「無傷」の4連勝とした。
【予選リーグ第5戦/日本 5-1 ニュージーランド】
予選リーグ・グループA1位通過をかけ、「最大の山場」と目されたこの一戦。日本は「次代のエース」と評される小山玲央を満を持して先発登板させ、立ち上がり「鉄壁の守備」でピンチを脱すると、直後に松田光、大石司の「連続ランニングホームラン」で2点を先制! この先制パンチで勢いづいた日本は、2回裏にパスボールで3点目を追加。1点を返された後の5回裏にも松田光の犠牲フライ、大石司の内野安打の間に4点目、5点目を加え、着々と加点!! 「前回大会の優勝投手」ニック・ヘイズを見事に「攻略」し、5-1で「快勝」。予選リーグ5勝0敗とした。
【予選リーグ第6戦/日本 2-0 キューバ】
前日のニュージーランド戦から一転、キューバ先発投手の「サウスポー独特のくせ球」を打ちあぐね、5回までわずか2安打と打線が沈黙。しかし、0-0のまま迎えた6回裏、二死一塁の場面で今大会「ノリに乗る」松田光がセンターへ「会心の当たり」のツーランホームランを叩き込み、待望の先取点!
守っても、初回に投手の守備を兼務し、「実質的な先発投手」となった松田光が6イニングを投げ、被安打2・奪三振9と相変わらず「安定感抜群のピッチング」を披露。最後は「若き新クローザー」池田空生がキッチリと試合を締めくくり、2-0で勝利を収め、予選リーグ6勝0敗とした(※日本はこの勝利で予選リーグ最終戦(ボツワナ戦)を待たずに『予選Aグループ1位での決勝トーナメント進出』を確定させた)。
【予選リーグ第7戦/日本 3-0 ボツワナ】
初回、無死一塁から井上知厚の「強烈」なツーランホームランで「先制パンチ」を浴びせると、続く2回表にも片岡大洋のヒットを足場に「相手守備の乱れ」に乗じて3点目を追加!
投げては、先発登板した「キャプテン」高橋速水が序盤3回を「パーフェクト」に抑え込み、その後、寺原瑞希、池田空生へつなぐ余裕の投手リレー。3-0の完封勝利で締めくくり、予選リーグ「7戦全勝」「Aグループ1位」でいよいよ決勝トーナメントに臨むこととなった。
◎「勝負」をかけた「最後の戦い」決勝トーナメント!
チーム一丸、ファイナル(決勝)進出を果たしてみせたが…
「予選Aグループ1位」で決勝トーナメントに進出した男子TOP日本代表は、決勝トーナメント初戦(予選A1位 vs 予選B4位戦)でベネズエラと対戦(※今大会は決勝トーナメントに従来あった『ソフトボール特有のページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント方式)』が採用されず、『真のトーナメント方式(一発勝負/勝利したチームのみ生き残れる)』となり、優勝を手にするには初戦、セミファイナル、ファイナルを負けなし(3連勝)で勝ち抜くことが条件とされた)。
【決勝トーナメント初戦(1位・4位戦)/日本 6-0 ベネズエラ】
初回にDP松田光が投手(先発オーダーでは小山玲央がFP/投手に入った)の守備を兼務して「実質的な先発投手」となり、ベネズエラ打線をキッチリ無得点に抑えると、直後、その松田光が先制タイムリースリーベース! 続く大石司にもタイムリーが飛び出し、幸先良く2点を先制。試合のペースを握った日本は4回裏にも八角光太郎のヒットを足場に、黒岩誠亥がセーフティーバントで揺さぶり、これが相手守備の乱れを誘って2点を追加。5回裏には二死一・二塁から池田寛人が左中間を切り裂くタイムリーツーベースを放って「トドメ」の2点を加え、6-0で完勝!!
決勝トーナメント・セミファイナル(準決勝)へと駒を進め、「19年ぶり(6大会ぶり)」に「5位の壁」を突破。まず「第一関門」であった「ベスト4入り」を果たし、今大会4位以上を確定させた。
【決勝トーナメント・セミファイナル(準決勝)/日本 2-1 ニュージーランド】
決勝トーナメント・セミファイナル(準決勝)では「王者」ニュージーランドと激突。初回、「ソフトボール王国」ニュージーランドの「レジェンド」であり「キャプテン」ネイサン・ヌクヌクに豪快な一発(ソロホームラン)を浴び、先制を許したものの、2回裏に筒井拓友がレフトへ鮮やかな一撃(ソロホームラン)を突き刺し、同点! 1-1のまま迎えた5回裏には、二死走者なしから森田裕介の二遊間を破るヒットを足場に一・二塁のチャンスを作り、「4番」大石司が「逆転」のタイムリーヒット!! 見事試合をひっくり返した。
守っては、先発登板した「次代のエース」小山玲央が「打線の援護」を力に「尻上がりのピッチング」を展開。自己最速となる「MAX135km/h」の快速球で、終わってみればニュージーランド打線をわずか2安打に抑え、完投勝利を飾り、ファイナル(決勝)進出を決めた。
【決勝トーナメント・ファイナル(決勝)/日本 2-3 アルゼンチン】
11日間に及んだ大会もいよいよ最終日。予選リーグを通じてここまで「無敗」。「全勝(9連勝)」でファイナル(決勝)へ駆け上がった男子TOP日本代表は、優勝(世界一の座)をかけてアルゼンチンと対戦。
試合は日本・松田光、アルゼンチン・ウエムル・マタの両投手が立ち上がりから「気迫溢れるピッチング」を展開。
3回裏に日本が押し出しの四球、パスボールで2点を先制し、このまま有利に試合を運ぶかと思われたが…アルゼンチンも終盤5回表にマリアノ・モンテーロ、マヌエル・ゴドイの長短打で1点を返し、反撃開始。6回表には二死三塁から、前の回「反撃の口火」を切った「要警戒打者」マリアノ・モンテーロに二遊間をしぶとく破られ、ついに同点。
6回から松田光→小山玲央に継投する等「全力」で戦った日本だったが…2-2のまま延長タイブレーカーに入り、迎えた10回表、この回先頭のマヌエル・ゴドイにレフトへ「痛烈」なタイムリーを浴びてしまい、2-3。打線も最後まで諦めることなくくらいついたが、結果「あと一歩」及ばず、「惜敗」となり、「準優勝(銀メダル)」に終わった。
◎「堂々の戦いぶり」で勝ち得た銀メダル
ファイナル(決勝)での「僅かな差」とは?
日本男子史上初の世界選手権優勝(世界一)こそならなかったが、今大会における男子TOP日本代表チームの「躍進」「快進撃」は素晴らしいものだった。今回の戦いぶりに皆が「誇り」を持ち、これからも頂点を高く、“世界”に挑み続けてほしいと心から思う。
次回はこの準優勝という成績を超え、「世界の頂点」へ!! 再び「前」を向き、歩みを進めていくためにも…我々はファイナル(決勝)/アルゼンチン戦の敗因を探り、今後の課題として整理しておく必要がある。
日本とアルゼンチン。両者の実力は「互角」であった。現時点の互いの戦力なら、10回対戦して5勝5敗といったところ。仮にどちらかが勝ち越したとしても、星一つ、二つといった「僅かな差」ではないだろうか。では、今回のファイナル(決勝)のどこにそれが生じたのだろう?
まず挙げたいのは、アルゼンチンの「強かさ」。そしてこの大一番で随所に見られた「クレバーなプレー」である。
ファイナル(決勝)では、審判(特に球審)のジャッジが非常にシビアだった。試合の勝敗を“審判に左右された”と言い訳するつもりはないが、球審においては内外角(インコース・アウトコース)のストライクゾーンをかなりワイドに(広く)とっていた印象がある。
この傾向をいち早くつかみ、自ら「有効に活かした」のがアルゼンチンの「先発右腕」ウエムル・マタであった。ウエムル・マタ自身も開幕から日を重ねるごとに調子を上げ、ファイナル(決勝)でキッチリ「ベストパフォーマンス」を発揮してきたところは「さすが」だったが、その勢いだけに身を任せず、冷静に、しっかりと状況判断しながら「ファイナル(決勝)使用のピッチング」を遂行していった。球審がアウトコースにボール1個(ときに1個半)広くストライクを取れば、そこを「逆に有利!」とばかり…徹底的に突いていく。要所で「球速130㎞/h超え」を連発し、試合を通してそのポイントを突き続ける「正確無比なコントロール」がウエムル・マタにあったこと、一発勝負の緊張感の中でも「臨機応変」にその場のベストを考え、選択できる「強かさ」「クレバーさ」をウエムル・マタが兼ね備えていたということも大きかった。2点を先制した日本であったが、これは相手バッテリーのミス(押し出しの四球、パスボール)によるもの。ファイナル(決勝)で日本打線が喫した「17三振」という数字が、「本気のウエムル・マタ」を攻略できなかった事実を物語っている。
また、9回裏、日本の攻撃の場面。2-2の同点、一死満塁でみせたアルゼンチン二塁手のスーパープレー(ダブルプレー)もその「強かさ」「クレバーさ」を象徴するものだった。実際の映像をご覧いただくと分かるが、この状況、セカンドゴロであれば、二塁手はまず“ホームゲッツー”をイメージする。だが打球が二遊間へ転がり、それは難しい。捕球して二塁フォースアウトにするだけでは三塁走者の本塁生還を許し「日本のサヨナラ勝ち」を成立させてしまうだけに、まさに両者の「明暗を分ける」瞬間だった。しかし…アルゼンチン二塁手はここで瞬時に「自ら二塁ベースを踏み、そのまま身体を反転させて一塁へ送球」という想定外のプレーを選択。結果「見事なダブルプレー」となり、最大のピンチを脱出! 自らのビッグプレーによって日本に傾きかけた流れをたぐり寄せることにもなった。勝利の女神を振り向かせた…ともいえるこのプレー。ファイナル(決勝)のアルゼンチンの戦いぶりを振り返ってみると、これは想定外ではなく…「想定内」だったような気がしてならない。
もう一つ挙げたいのは、「メンタル」だ。ファイナル(決勝)まで「全勝」で勝ち上がってきた日本と、その日本に予選リーグの対戦で敗れ(※スコアは4-8)、僅か1敗とはいえ「負けを経験していた」アルゼンチン。「一度負けた日本を今度は絶対倒してやろう!」と挑んできたアルゼンチンに対して、日本は「今まで通りプレーすれば負けることはない」と試合に臨んだ感があった。もちろん、日本が油断したということではない。選手は持てる力で、全力でプレーしていた。ただ…ファイナル(決勝)を戦っていた日本にこれまで以上の上積みがあったかといえば、そうではなく、どこか「現状維持の戦い」になってしまっていたことは否めない。今大会、打撃部門で首位打者(5割4分6厘)・打点王(13打点)の二冠に輝く等“周囲の胸を打つ活躍”をみせた松田光も、ファイナル(決勝)では「不発」に終わった。内外角にワイドなストライクゾーンを「徹底して有効活用」してきたウエムル・マタの「クレバーなピッチング」に対して、いつものように振り回してしまった…。先にも書いたが、両者の実力にほとんど差はない。だが、このファイナル(決勝)についていえば、プレー面・メンタル面ともに「僅かな差」が生じてしまったと感じている。その僅かでも日本を上回ったアルゼンチンが、最後「優勝をさらっていった」ということに尽きるのではないだろうか。
◎アルゼンチンの初優勝で「世界の勢力図」に「変化」!?
上位は優勝・アルゼンチン、準優勝・日本、第3位・カナダ、以下(※決勝トーナメントに進出したチーム)4位・ニュージーランド、5位・アメリカ、6位・ベネズエラ、7位・オーストラリア、8位・チェコという最終順位になった「WBSC第16回世界男子ソフトボール選手権大会」。次回から「男子ワールドカップ」へと名称が変更されるこの「男子ソフトボール『世界一』を決める大会」であるが、どのような展開になっていくだろう。
これまで「世界の3強」といえば、ニュージーランド、オーストラリア、カナダだったが、今回のアルゼンチンの初優勝、日本の準優勝によって一つ「厚く高い壁」が破られたように思う。
アルゼンチンは、やはり2012年・2014年の「世界ジュニア選手権連覇」が「ターニングポイント」になった。現に当時の優勝メンバー(ウエムル・マタ、ロマン・ゴドイら)がトップチームの主力に成長を遂げ、活躍。「世界トッププレーヤーの仲間入り」を果たし、この第16回世界選手権で真に「世界の頂点」へ登り詰めてみせた。
日本も同じように2016年の「世界ジュニア選手権制覇」が「転換期」となっており、当時の「エース」小山玲央がこうしてフル代表入りを果たし、世界選手権の舞台にデビュー。今大会全投手の中で「最速」の「MAX135㎞/h」を叩き出し、早くも「チーム躍進の原動力」になっている。
一方、ニュージーランド、オーストラリア、カナダに目を向けると、「難しい世代交代の時期」にさしかかっている状況がうかがえた。
ニュージーランドは「世界選手権3連覇」を成し遂げた実績を誇る「レジェンド」ネイサン・ヌクヌクが今大会もキャプテンを務め、チームを引っ張ったが、「次代を担うべき選手」にまだそれほど「怖さ」を感じなかった。今回メダルを逃した「現実」をどう受け止め、今後どのように「再建」に動くのか? 「ソフトボール王国」の意地とプライドにかけ“このまま終わる”とは思えないが、今までに感じたことのなかった「危機感」を抱いたはずである。
オーストラリアは今回キャプテンとしてチームをまとめた「世界最高のサウスポー」アンドリュー・カークパトリックが、今大会を最後に「代表を引退」。2009年の第12回大会でそのアンドリュー・カークパトリックとアダム・フォーカードの「二枚看板」が躍動し、「世界一」に輝いて以降、常に優勝争いを演じてきた一つの時代に「区切り」をつけることになった。だが、これまでの世界ジュニア選手権4連覇を含め(※前回大会(2018年)も制し、世界ジュニア選手権では『最多5度』の優勝を誇っている)、「次代を担える若手」は多数有しており、これを機に心機一転「新体制(新編成)」へ踏み切ることも十分考えられる。前回の世界ジュニア選手権で日本打線を抑え込んだ「本格右腕」レイトン・リードをはじめ、真の意味で「次代のスター候補たち」の「お手並み拝見」といったところか。
カナダは今大会日本と同じく開幕から「連戦連勝」。持ち前の「攻守にレベルの高いソフトボール」で突き進み、日本にとって「最大の難関」と目されていたが、決勝トーナメント・セミファイナル(準決勝)でアルゼンチンに0-7とまさかの5回コールド負け。最後は「予想外」の形で終戦となってしまった。メンバー構成は前回(2017年)とほぼ同じで、投手は“投球術多彩な右腕”ショーン・クレアリー、打者では“世界最高のスラッガー”と呼び声の高いスティーブ・ミュラーリーが相変わらず「中心的活躍(※ショーン・クレアリーはウエムル・マタと同じく今大会最多勝(4勝)、スティーブ・ミュラーリーは今大会最多本塁打(4本)を記録した」をみせ、チームを牽引していたが…先にふれたニュージーランド、オーストラリア同様「世代交代」という部分では「不安」を覗かせている。このカナダも男子ソフトボールでは昔から言わずと知れた「世界的強豪国」であり、“このまま落ちていく”とは考えにくいが、今後の動向(強化策・強化方針)が一つカギを握っているといっていいだろう。
世界選手権(※次回からワールドカップに名称を変更)全体のレベルを押し上げ、さらに盛り上げていくためには「上記強豪国以外が台頭し、躍進すること」も必要不可欠である。個人的な想いとしては…決勝トーナメントだけでなく、予選リーグを含め全試合が「もっともっとエキサイティングな戦い」になってほしい。今回アルゼンチン、そして日本が上位に割って入ったように、世界各国の努力・進化で「どこが勝ってもおかしくない」、今後ワールドカップという名に「真にふさわしい世界一決定戦」へと発展を遂げてもらいたいものである。
ヨーロッパのチェコも世界の強豪をアッと驚かせる「チーム力(爆発力)」があるし、アフリカのボツワナにも「球速130㎞/h」の快速球を投げ込む「身体能力の高い選手」が存在している。改めて見渡すと、世界はやはり広いのだ。一部の強豪国がいつまでも強い…ではなく、世界中の国々が強く、盛んであってほしい。そのためにも「男子ソフトボールのトップレベル」を、「真の魅力・醍醐味」を、この世界選手権(ワールドカップ)から発信し続けていかなければならない。
◎世界各国の「熱」を結集させ、次なるステージへ !!
男子ソフトボールには、今回のような「世界選手権等のビッグイベント」を成功させ、盛り上げていくことと並行して「取り組まなければならない課題」がある。それは何といっても…ソフトボールという競技(スポーツ)そのものの認知度アップ、「普及・発展」だ。
2016年の世界ジュニア選手権の際、U19ニュージーランド代表チームのトーマス・マケアヘッドコーチがこんな話をしてくれた。
「男子ソフトボールにおいてニュージーランドは『世界最強』と称されているが、国内ではやはりラグビー“オールブラックス”が花形。我々“ブラックソックス”も国民から長く人気・価値を得ているものの、決してナンバーワンというわけではない。日本に野球があり、多くの子どもたちがプロ野球選手をめざしているように、ニュージーランドでも子どもたちの大半はまず“オールブラックス”に憧れ、そこをめざしている。実際のところ…ニュージーランドでソフトボールはラグビー、クリケットに続いて『3番目』の認知度。国内では残念ながら『マイナースポーツ』という印象のほうが強い」と。
この話を聞いて、ソフトボールの「普及・発展」は「世界共通の課題」であることを強く再認識させられたものだった。
今回、チェコ・プラハで盛り上がりをみせた「WBSC第16回世界男子ソフトボール選手権大会」だが、男子ソフトボール全体の状況・展望としてとらえると…まだまだ厳しい現実がある。
簡単なことではないのは百も承知だが、その厳しい現状を少しずつでも「自分たちが変えていく」こと。男子ソフトボールの未来は、すべてそこに携わる者たちの熱意・行動にかかっているといっていい。
「ニュージーランドでもソフトボールは『マイナースポーツ』」とあえて語ったトーマス・マケアも、胸の内には、かつてブラックソックスの主力として世界を何度も制した「王国の魂」「熱き闘志」を秘めている。また、その歴史・伝統を自らが次世代へ継承し、「新たな時代」を切り拓こうと「次代のスター育成」に全力を注いでもいる(※今大会にはそのトーマス・マケアの『息子』レイリー・マケアもニュージーランド代表(ブラックソックス)の一員として出場。世界選手権デビューを果たした)。
これは日本も同じ。今回男子TOP日本代表チームを率いた岡本友章ヘッドコーチは「日本協会常務理事/男子強化委員長」という要職にもあり、「男子日本代表の強化」と並行して「男子ソフトボール活性化」という大きな、重要なミッションの舵取りを担っている。
「男子ソフトボールを何とかしたい!」と話す関係者は日本のみならず、世界にも多い。野球・ソフトボール不毛の地と言われるヨーロッパでこれだけ大会を盛り上げてくれたチェコ。我々はその心意気に敬意を表するだけでなく、今度はそこを巻き込み、「同じ仲間」としてともに歩みを進めていかなければならない。
勝負の場である以上「勝ち負けを競うこと」はもちろん第一なのだが、その「勝ち負けだけ」で大会を完結させてはいけない。改めてそう感じた…今回の世界選手権であった。男子ソフトボールをもっともっと「普及・発展」させ、「魅力ある競技(スポーツ)」としていくためには何が必要か? 今こそ世界中の国々の「熱」を結集させ、考え、動くときではないだろうか。
2019男子TOP日本代表、「世界男子選手権準優勝! 銀メダル獲得!! 」
ここは日本の男子ソフトボールにとってもゴールではなく、「新たなスタート(ターニングポイント)」なのである。
●文・写真
男子TOP日本代表チーム
選手団広報/竹﨑 治(日本体育社)
No. | 役職 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|---|
1 | 団長 | 東山 直己 | 日本ソフトボール協会 |
2 | ヘッドコーチ | 岡本 友章 | 高知パシフィックウェーブ |
3 | アシスタントコーチ | 吉村 啓 | 平林金属 |
4 | アシスタントコーチ | 照井 賢吾 | 高崎市役所 |
5 | トレーナー | 田岡 幸一 | Body Laboratory |
6 | マネージャー | 三村 奈弓 | ホンダエンジニアリング |
7 | アナリスト | 新井 千浩 | 平林金属 |