女子GEM3(U19)日本代表が第2次国内強化合宿を実施!
青森県弘前市で日本女子ソフトボールリーグ1部の「強豪」の胸を借り
テストマッチを。実戦形式で世界選手権「本番」へ向け、強化に励んだ
「世界最高峰のリーグ」で揉まれた強豪相手とあって、
その「力」の前に圧倒される場面も……
来日中のチャイニーズ・タイペイU19代表チームとの対戦も実現
チャイニーズ・タイペイとの対戦でもなかなか投打が噛み合わず…
まだまだ本当の意味で「チーム」となるには「時間」が必要
日本体育大学男子ソフトボール部の協力を得て、
「宿敵」アメリカを想定し、男子ピッチャーを打ち込む
かつての金メダリストたちがその「経験」と「技術」を伝授。
「世界一」の座を取り戻すために……やるしかない!!
去る7月2日(日)~5日(水)の4日間、青森県弘前市で女子GEM3(U19)日本代表が「第2次国内強化合宿」を実施した。
この「第2次国内強化合宿」は、7月24日(月)~30日(日)、アメリカ・フロリダ州クリアウォーターで開催される「第12回世界女子ジュニア選手権大会」(大会スケジュールはこちら)向けた強化を目的としたもので、4月4日(火)~7日(金)、愛知県豊田市・安城市で実施された「第1次国内強化合宿」(第1次国内強化合宿の記事はこちら)以来、2度目の合宿となった
この合宿実施期間中は、台風3号が日本列島を直撃。梅雨前線を刺激したこともあり、全国各地に大雨や土砂災害に見舞われるあいにくの天候となったが、先の「第6回東アジアカップ」(6月18日~21日)の大会開催時にも見られた弘前市のスタッフの熱意と温かなもてなし、当地・弘前の出身であり、2008年の北京オリンピックで日本に「悲願」の金メダルをもたらした名将・齋藤春香氏の名を冠した「はるか夢球場」を「核」とする弘前市運動公園の充実した施設をフル活用。「はるか夢球場」はもとより、克雪トレーニングセンターの室内練習場を利用し、悪天候をものともしない猛練習が繰り広げられ、「ソフトボール漬け」の毎日となった。
合宿初日(7月2日/日)、午後には「女子GEM3(U19)日本代表」17名が全員集合。約3カ月ぶりに招集された面々は、再会を喜ぶ暇もなく、すぐさま練習を開始。それぞれのコンディションを確認すると同時に、「チーム」となるべく全員の意思統一が図られ、約3時間汗を流した。
その日の夜のミーティングでは、木田京子ヘッドコーチを中心に、この合宿の目的である「試合経験と国際試合で必要なスキルの習得」が確認され、2大会ぶり6度目の「世界一」をその手につかむべく、選手・スタッフ全員が心を一つにし、翌日からの本格的な強化スケジュールに備えた。
合宿2日目(7月3日/月)は、日本女子ソフトボールリーグ1部・SGホールディングス ギャラクシースターズの協力を得て、テストマッチを実施。あいにくの悪天候のため、途中から克雪トレーニングセンターの室内練習場に場所を移し、実際の試合を想定した試合形式での練習を繰り返した。
また、日本体育大学男子ソフトボール部の協力を得て、「宿敵」アメリカを想定した男子ピッチャーの打ち込みも実施。夜9時まで夜間練習まで実施する熱の入れようで、来るべき「本番」に備え、何度も何度も打ち込み、バットを振り続けた。
また、宿舎では今回の合宿に特別にご協力いただいた園田学園女子大・餅教授、東北女子大・松本教授、3名の天理大大学院生から栄養面のアドバイスを受け、その後、その日の練習で洗い出されたチーム課題や問題点について振り返る時間を持つと同時に、選手自身の打撃フォームや投球フォームについてのフィードバックも行われ、徹底した技能(技術)向上に努めた。
合宿3日目(7月4日/火)は、午前中、日本女子ソフトボールリーグ1部の「上位進出の常連」豊田自動織機 シャイニングベガとテストマッチ。初回、当地・弘前出身の須藤志歩の二塁打等で2点を先制する幸先の良い滑り出しを見せたが、「世界最高峰のリーグ」で揉まれる百戦錬磨の「強者」の前に2-7の逆転負け。「力の差」「経験の差」を見せつけられる場面も多く、課題の多い試合となった。
午後は来日中のチャイニーズ・タイペイU19代表チームと対戦。今度は投手陣が奮起し、チャイニーズ・タイペイ打線を終盤までノーヒットに抑えたものの、逆に打線がなかなか得点できず……。終盤、ようやく「日本らしい」機動力を駆使した攻めで先取点を奪い、松本怜奈のソロホームランで2点を挙げ、最終回のチャイニーズ・タイペイの反撃を1点に抑え、2-1で勝利を収めた。
試合を終えると、この日の試合で出た課題、問題点をすぐにおさらい。内外野の連係プレー、一・三塁でのフォーメーション等、「チーム」としての約束事を再確認するとともに、個々の守備範囲、肩の強さ・スローイングの正確性等をお互いに確かめ合い、誰がカットに入るのか、カットマンはどの位置までボールを追うのか等、入念にチェック。守備組織の確立に努めた。
最後は「宿敵」アメリカとの対戦を想定した男子ピッチャー相手の打ち込み。この日は佐藤理恵アシスタントコーチの発案でチェンジアップを交えてのバッティング練習となり、速いボールへの対応と同時に、タイミングを外されたとき、緩いボールにいかに対応するかがテーマとなった。
夜間練習でもこの打ち込みは続き、練習相手を務めた男子ピッチャーが「こんなに投げたことはない……」と、つい嘆きたくなるほど、熱心な打ち込みが続いた。
宿舎でも、佃文子トレーナーから時差調整や現地環境に対するコンディションについての諸注意があり、その話に耳を傾けた後、コーチからこの日の練習を振り返り、課題・問題点の克服に努め、世界選手権「本番」で対戦が予想される諸外国を想定した打撃練習に時間が割かれた。
合宿最終日(7月5日/水)は、やはり日本女子ソフトボールリーグ1部の「強豪」日立 サンディーバとテストマッチ。この試合では打線が日立 サンディーバ投手陣の前に完全に沈黙。0-2の完封負けを喫し、「第2次国内強化合宿」を打ち上げた。
合宿を終え、木田京子ヘッドコーチは、「ようやく打順、ポジションがおぼろげながら見えてきたように思います。投打ともにまだまだバランスが取れず現時点では、戦い方の理想的な方向性が見えていません。過去のこのカテゴリーで好成績を残してきたチームに比べると、現状を見る限り、まだまだ厳しい状況にあると思います」と、大会を直前に控え、「危機感」を露わにし、「正直、『ソフトボールの基礎知識』から伝えていかなければいけない状況で……。もう少し時間がほしい……と思わずにはいられません」と、苦しい胸の内を語りながらも、「この世代の選手たちは一日で驚くような成長を見せてくれることもあります。『世界』の舞台に立ち、『世界』を知ることで、その素質を開花させ、秘めた能力を『覚醒』させてくれれば……。若さが持つ『無限の可能性』に期待しましょう!」と、自らに言い聞かせるように大会へ向けた決意を語った。
佐藤理恵アシスタントコーチは、「アメリカとの対戦を想定し、男子ピッチャーを打ち込み、『いい感じになってきたかな』と思ったら、スピードのないチャイニーズ・タイペイのピッチャーを打ちあぐんでしまう。一つのことをやるとそれだけになってしまって……。状況に応じて臨機応変に対応するということができない」と、問題点を語り、男子ピッチャーにあえてチェンジアップを要求し、それに対応させるという練習を盛り込んでいた。
また、守備のフォーメーションにおいても、指示の出し方や声のかけ方、ポジショニングについて細かに指導。グラウンドの硬さの違いやスライディングの激しさ、体格の違い等、国内の大会・試合とは異なる「国際仕様」のプレーを伝授していた。
染谷美佳アシスタントコーチは、慣れないスコアラー業務やマネージャー業務も兼務しながら、国際大会のストライクゾーンの違いや、外国人打者の特徴、日本人選手との差異を投手陣にアドバイス。選手たちもそれを少しでも自分のモノにしようと懸命な取り組みを見せていた。
佃文子トレーナーは、「ソフトボール漬け」の毎日にあっても、選手たちの心身のコンディショニングに心を砕き、ちょっとした時間を利用して練習にメリハリをつけ、リフレッシュ。必要なトレーニングや心身のケアは十分に行いながら、巧みに選手たちに「笑顔」を取り戻す時間を作り、心機一転、新たなモチベーションを持って前向きに練習に取り組めるよう努めていた。
確かに、1999年、2003年に全勝で「世界の頂点」に登り詰め、「連覇」を飾ったときのような「強さ」は、今のところ、このチームから感じることはできない。すでに「TOPチーム」でも結果を残している勝股美咲(多治見西高/岐阜)、その「TOPチーム」が渇望してやまない貴重な大型左腕・後藤希友(東海学園高/愛知)、この二人とともに「高校BIG3」と称される山内早織(清水ヶ丘高/広島)が、最終学年で臨むインターハイと、この「第12回世界女子ジュニア選手権大会」の日程が重なるため、選考会の参加を辞退。しかしながら、いずれも県予選で敗退し、インターハイ出場が叶わなかったことを受け、「超法規的措置」でこれらの選手の出場させることはできないか……との声も多方面から上がっていた。
しかし、すでに選考会を終え、代表選手も決まっており、その選手たちを入れ替えることはできないと、当初のメンバーのまま、大会に臨むことが決定したが、それが実現していたら、またチームの様相もまったく変わっていたかもしれない。
逆に言えば、ここにいる選手たちにとっては、「またとないチャンス」なのである。特に投手陣にとっては、ほぼ間違いなく選ばれていたはずの「3枠」が望外に回ってきたのだ。この「チャンス」を活かせるかどうかは自分自身にかかっている。「世界」を相手にその「力」を示し、「世界」を相手に「結果」を残せば、その評価はたちまち逆転する。それが「勝負の世界の厳しさ」であり、裏を返せば、結果さえ残せば自分自身の手で道を拓くことができる「実力のみ」がモノをいう世界でもある。「前評判」など関係ない。「結果」がすべての世界なのである。
2011年の第9回大会の日本は予選リーグ・決勝トーナメントを全勝で勝ち上がり、セミファイナルでは「宿敵」アメリカにコールド勝ちし、「無敵」の勢いで勝ち上がりながら、決勝では満塁ホームラン「一発」に泣き、大会初黒星が取り返しのつかない敗戦となり、ほぼ手中にしていた「世界一」は指の隙間からこぼれ、準優勝に終わった。
2013年の第10回大会では、逆に予選リーグこそ「全勝」で勝ち上がったものの、「全勝対決」となったアメリカとのセミファイナルに0-4の完敗。アメリカは「全勝」どころか決勝まで「無失点」で勝ち上がり、大会史上初の「3連覇」は間違いなし……と見られていた。しかし、敗者復活戦に回り、ブロンズメダルゲームでオーストラリアに9-2の5回コールド勝ちして決勝に勝ち上がった日本は、アメリカとの「再戦」で奥田茉優希(現・女子TOP日本代表/日立 サンディーバ)のタイムリー、青木千春(現・女子GEM4(U23)日本代表/太陽誘電 ソルフィーユ)のホームラン等で一挙4点を奪い、アメリカから今大会初めての得点を挙げると、最後は「天」も味方につけ、6回雨天コールドでアメリカの3連覇を阻止し、3大会ぶり5度目の「世界一」を勝ち獲っている。
そう……勝負の世界は何が起こるかわからない。結末は決まってなどいない。シナリオなどありはしない。だからこそ……やり甲斐もある。自分たちの力次第で、自分たちのプレー次第で、「結末」を書き換えることができる。その「チャンス」は目の前にある。
このカテゴリーで活躍した選手の多くが「オリンピック」の舞台を踏んでいる。この舞台はオリンピックへと続いている。その「チャンス」をモノにできるか否かも、すべて「自分」にかかっている。
No. | 守備 | 氏名 | 支部 | 所属 |
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1 | 投手 | 浅井 茉琳 | 東京都 | 日本体育大 |
2 | 〃 | 伊藤 貴世美 | 東京都 | 早稲田大 |
3 | 〃 | 星加 きらら | 埼玉県 | 戸田中央総合病院 |
4 | 〃 | 三原 千空 | 兵庫県 | 園田学園女子大 |
5 | 〃 | 三輪 さくら | 愛知県 | トヨタ自動車 |
6 | 捕手 | 佐竹 紫乃 | 群馬県 | 太陽誘電 |
7 | 〃 | 服部 洋代 | 兵庫県 | 園田学園女子大 |
8 | 野手 | 甲野 紋加 | 愛知県 | デンソー |
9 | 〃 | 重石 華子 | 滋賀県 | 日本精工 |
10 | 〃 | 下村 歩実 | 兵庫県 | 園田学園女子大 |
11 | 〃 | 下山 絵理 | 兵庫県 | 園田学園女子大 |
12 | 〃 | 須藤 志歩 | 愛知県 | 豊田自動機械 |
13 | 〃 | 諏訪 いろは | 山梨県 | 山梨学院大 |
14 | 〃 | 高橋 亜珠美 | 埼玉県 | 戸田中央総合病院 |
15 | 〃 | 藤本 麗 | 群馬県 | ビックカメラ高崎 |
16 | 〃 | 松本 怜奈 | 神奈川県 | 日立 |
17 | 〃 | 宮本 実侑 | 群馬県 | ビックカメラ高崎 |
No. | 役職 | 氏名 | 支部 | 所属 |
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1 | チームリーダー | 齋藤 春香 | 青森 | (公財)日本ソフトボール協会 |
2 | ヘッドコーチ | 木田 京子 | 兵庫 | 園田学園女子大 |
3 | アシスタントコーチ | 佐藤 理恵 | 東京 | 東京女子体育大 |
4 | アシスタントコーチ | 染谷 美佳 | 愛知 | デンソー |
5 | トレーナー | 佃 文子 | 滋賀 | びわこ成蹊スポーツ大 |
6 | マネージャー | 山口 憲子 | 愛知 | 日立 |