コラム第3回 「目の前で人が倒れたら」
スポーツの練習中や大会時に、選手、審判、観客などが突然倒れることがあり得ます。どのように対応したらよいかを説明します。
①周囲の安全を確認する
倒れた人に近づく前に、周囲の安全を確認しましょう。自分自身の安全を必ず確認した上で、倒れた人に対応しましょう。
②反応を確認する
安全を確認した上で、倒れた人の反応を確認しましょう。倒れた人の肩をたたきながら大声で呼びかけても、目を開けたり、動きによる応答がなければ、「反応なし」と判断して下さい。判断に迷う場合は「反応なし」として対応します。
③周囲に応援、119番通報、自動体外式除細動器AEDを依頼する
周囲の人に応援を頼むとともに、119番通報を依頼し、近くのAEDを持って来てもらいます。
④呼吸を観察する
倒れた人の胸と腹が上下に動いていなければ、呼吸をしていません。あえぐような呼吸をしている時もありますが、これは普段通りの呼吸ではないので、「呼吸をしていない」と判断します。
⑤胸骨圧迫を行う
倒れた人の胸の真ん中を、強く(約5cm沈むくらい)、速く(1分間に100〜120回のテンポ)、絶え間なく押します。周囲に人がいれば、2分を目安に交代しましょう。
感染症の不安を感じるようであれば、人工呼吸は必須ではありません。
⑥AEDを使用する
AEDの電源ボタンを押しましょう。AEDのフタを開けると電源が入るものもあります。AEDの音声メッセージやランプに従って使いましょう。「電気ショックは不要です。」という音声メッセージが流れても、倒れた人の反応がない状況が続いていれば、直ちに胸骨圧迫を実施して下さい。
⑦心肺蘇生を続ける
救急隊が到着するまで、あるいは倒れた人が普段通りの呼吸や反応が回復するまで継続しましょう。
最後に、新型コロナウイルス感染症の流行後における心肺蘇生の注意点を挙げます1)。
●反応を確認したり、呼吸を観察する際に、倒れた人の顔に近付きすぎないようにしましょう。
●胸骨圧迫時に生じるエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)の飛散を防ぐため、胸骨圧迫を始める前に、ハンカチやタオルなどがあれば倒れた人の鼻と口にかぶせます。マスクや衣服などでも代わりになります。
●救急隊に引き継いだ後、速やかにせっけんと流水で手と顔を十分に洗いましょう。倒れた人の鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは、直接触れないで廃棄するのが望ましいです。
1) 一般財団法人日本救急医療財団心肺蘇生法委員会:新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた市民による救急蘇生法について(指針)、https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000632828.pdf(2022年3月閲覧)