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ニュース 男子U23

◎WBSC第1回男子U23ソフトボールワールドカップを振り返って

記念すべき ″第1回大会制覇″ をめざし、「若き戦士たち」が奮戦 !!
この「経験・悔しさ」を…… 日本男子ソフトボールの未来につなげて

2023.4.15~23、アルゼンチン・パラナで開催された
「第1回男子U23ワールドカップ」を振り返り、総括

日本男子ソフトボールの次代を担う16名が、世界に挑戦!

大事な大会初戦をしっかり勝ち切り、まずは白星発進

予選ラウンドの「山」カナダ戦にも快勝! 勢いに乗る !!

日本は予選ラウンドを5戦全勝&1位通過!
「最高の形」で勝負のスーパーラウンドへと進む

スーパーラウンドも通算4勝1敗と堂々たる戦いぶり!
オーストラリアと「優勝決定戦」で「再戦」することになった

優勝をかけた最後の戦い、日本の前に立ちはだかったのは…
TOPカテゴリーで「すでに世界一」となっている「サウスポー」ジャック・ベスグローブ

その現・世界No.1サウスポーから4安打を放ったものの、
11三振を奪われ、完封負け…「悔しい準優勝」に終わる

今大会、日本投手陣の活躍は本当に素晴らしかった

打撃においても各打者が役割を忠実に遂行、着実に得点

優勝・世界一には惜しくも「あと一歩」届かなかったが…
日本を準優勝へ導いた横田将和ヘッドコーチの功績大
(※画像左:U23日本代表・横田将和ヘッドコーチ)

今後に向けて、もうワンランク上の球速・球威を!

海外特有のストライクゾーンへの対策・対応もカギ

「トップレベルでは ″甘い球″ はこない。難しいコースや球種をいかに仕留めるかがポイントになる!」と過去にアドバイスしてくれた「ニュージーランドの英雄」ドニー・ヘイル氏

元・男子TOP日本代表の先人たちにも話を伺った
(※画像は2004年の第11回世界選手権に出場した
永吉慎一氏:豊田自動織機 シャイニングベガ 監督)

「日本男子ソフトボールの顔」であった松田光氏とも再会。
「世界の厳しさを身を持って知ること。チャレンジし続けることの大切さ・尊さ」を語ってくれた

今大会の経験・悔しさを、必ずやTOPカテゴリーにつなげて…

U18→U23→TOP、選手強化の流れをより強固なモノに!

すべては、日本男子ソフトボールの未来のために !!

 2023年4月15日(土)~23日(日)の9日間、アルゼンチン・パラナにおいて「WBSC第1回男子U23ソフトボールワールドカップ」が開催され、「男子U23日本代表チーム」が世界の舞台にチャレンジ。記念すべき ″第1回大会制覇″ をめざし、遠い南米・アルゼンチンの地で激闘を繰り広げた。

 この男子U23ワールドカップは、同じく今年、日本・東京で開催予定の「WBSC第1回女子U15ソフトボールワールドカップ」とともにWBSC(世界野球ソフトボール連盟)主催国際大会に「新たに追加」されたワールドカップ。
 大会には各大陸(アフリカ、北・中・南米、アジア、ヨーロッパ、オセアニア)予選を通過した11チームとワイルドカード1チームを加えた合計12チーム(アルゼンチン①、カナダ②、日本③、オーストラリア④、チェコ⑥、ニュージーランド⑦、ベネズエラ⑧、メキシコ⑩、南アフリカ⑫、シンガポール⑭、イスラエル㉑、◎WBSCチーム ※○数字は大会開催時の世界ランキング ◎=グアテマラオリンピック委員会が国際オリンピック委員会より出場停止処分を受けているため、グアテマラの選手は国を代表したり、国際的なスポーツイベントにその国旗・国名で競技したりすることができないことになっている。そのため、今大会に「WBSCチーム」として出場した)が出場。
 出場12チームを世界ランキングに基づき2グループに振り分け、まず1回総当たりの「オープニングラウンド」(予選リーグ)を実施。各グループの上位3チームが「スーパーラウンド」(プレーオフ)へ進み、同じく1回総当たりで対戦し(※ただし、オープニングラウンドで同グループだったチーム同士の対戦は、オープニングラウンドの試合結果が持ち越される)、ラウンド順位を決定。最終日、スーパーラウンド3位・4位がワールドチャンピオンシップ/ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)を、スーパーラウンド1位・2位がワールドチャンピオンシップ/ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)を戦うというスケジュールで覇が競われた。

 昨年(2022年)9月のU23アジアカップ(※第1回男子U23アジアカップ/9月1日・2日 高知県四万十市において開催)で全勝優勝(※日本 7-1 インド、日本 7-0 シンガポール、日本 9-0 インド、日本 6-0 シンガポール)を飾り、「アジア1位」で本大会に臨んだ日本は、まずオープニングラウンド初戦でWBSCチームと対戦。序盤2点をリードしながら追いつかれるという予想外の展開を強いられながらも、最終的に5-2でしっかり勝ち切り、白星発進。続くイスラエル戦も7-0の6回コールド勝ちで連勝すると、オープニングラウンドの山と目されていた難敵・カナダ戦にも5-1で快勝! このカナダ戦の勝利(オープニングラウンド3連勝)でオープニングラウンド残り2試合を残し、早々と「スーパーラウンド進出」を確定させた。「勢いに乗った」日本は続くオープニングラウンド第4戦/ベネズエラ戦、オープニングラウンド最終戦/ニュージーランド戦にも2-0、5-0と破竹の5連勝!! オープニングラウンド・グループB「5戦全勝」「文句なしの1位通過」でスーパーラウンドへ駒を進めることとなった。

◆現地レポート【大会第1日/WBSCチーム戦】はこちら
◆現地レポート【大会第2日/イスラエル戦】はこちら
◆現地レポート【大会第3日/カナダ戦】はこちら
◆現地レポート【大会第4日/ベネズエラ戦】はこちら
◆現地レポート【大会第5日/ニュージーランド戦】はこちら

 「快調な戦いぶり」でオープニングラウンド突破を果たした日本は、スーパーラウンド初戦のメキシコ(オープニングラウンド・グループA2位)戦も先発・海邉和也の1安打・12奪三振の快投等で1-0の完封勝利。オープニングラウンドで同グループだったカナダ(オープニングラウンド・グループB2位)、ニュージーランド(オープニングラウンド・グループB3位)との対戦成績(※日本 5-1 カナダ、日本 5-0 ニュージーランド)がすでに持ち越され、スーパーラウンドの通算成績を3勝0敗とすると、続くスーパーラウンド第2戦/オーストラリア(オープニングラウンド・グループA1位)戦にも ″相手エース″ ジャック・ベスグローブが ″登板を回避してきた″ とはいえ、「打線の奮起」で8-1(5回コールド)と圧勝! スーパーラウンド最終戦を残し、一足先に「ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)進出」を決めた。スーパーラウンド最終日のアルゼンチン(オープニングラウンド・グループA3位)戦は、地元・アルゼンチンの「熱狂的な観客」が押し寄せ……メイン球場/ナファルド・カルグネル・スタジアムは超満員に。まさに「南米特有」の「熱く燃え上がるような」雰囲気の中、プレーボールがかかり、0-0のまま延長タイブレークにもつれ込む「死闘」を展開。迎えた延長9回表、アルゼンチンに ″喉から手が出るほどほしかった1点″ を奪われてしまい、そのまま0-1で敗れる(今大会初黒星を喫する)形となりはしたものの……スーパーラウンドを「1位:通算4勝1敗」の成績で終える「堂々たる戦い」を見せた。

◆現地レポート【大会第6日/メキシコ戦】はこちら
◆現地レポート【大会第7日/オーストラリア戦】はこちら
◆現地レポート【大会第8日/アルゼンチン戦】はこちら

 大会最終日のゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)では、記念すべき ″第1回大会優勝″ をかけて「最大のライバル」オーストラリアと再び激突!
 試合は日本・八木孔輝、オーストラリア ジャック・ベスグローブの両先発投手が立ち上がりから一歩も譲らず投げ合い、0-0のまま終盤に突入。日本は5回表から2番手・海邉和也にスイッチし、5回表、6回表もオーストラリア打線に得点を許さず、依然「互いに無得点」のまま最終回へ入った。
 しかし、迎えた7回表、日本は一死からオーストラリアの7番打者にレフトオーバーのツーベースを許すと、8番打者は空振り三振に仕留め、二死二塁となったが、その後パスボールで二塁走者が三塁に進塁。ここで「曲者の9番打者」ジェレミー・ウォータースに三遊間を破られ……ついに1点を奪われてしまう。
 1点を追う展開となった日本はその裏「気持ちを切らすことなく」懸命に反撃を試み、この回先頭の5番・佐藤光希がチェンジアップをとらえ、レフト線にツーベースヒット! 無死二塁の同点のチャンスを作ったが、6番・大川竜志はショートゴロで走者を進められず、一死二塁。7番・西森亜夕夢も空振り三振に倒れ、二死二塁となり、最後は8番・本塚勇太がサードフライに打ち取られ、スリーアウト。試合終了。男子U23日本代表はすでにTOPカテゴリーで「世界一」となっているオーストラリアの「エース」ジャック・ベスグローブから4安打を放ったものの、11三振を奪われ、悔しい完封負けを喫し、今大会「準優勝」に終わった。

◆現地レポート【大会第9日/優勝決定戦:オーストラリア戦】はこちら
「WBSC第1回男子U23ソフトボールワールドカップ」最終結果はこちら

世界の舞台で「クオリティの高いソフトボール」を展開!
横田将和ヘッドコーチのもと、「チーム一丸」となって !!

 日本男子ソフトボールの「次代を担う選手たち」(16名)が選出され、アルゼンチン・パラナの地で「熱く燃えた」9日間に及ぶ戦い。「男子U23日本代表チーム」はオープニングラウンド・スーパーラウンドを通算9勝1敗(※オープニングラウンドから持ち越された勝ち星を含む)の好成績で駆け上がり、「世界一」には惜しくも「あと一歩」届かなかったものの、 ″世界に日本あり!″ と改めて印象づける「クオリティの高いソフトボール」を見せてくれた。

 今大会、男子U23日本代表の戦いぶりにおいてまず「高く評価」されるのが「投手陣の頑張り」だ。ソフトボールの勝敗は「投手の出来で決まる」とよく言われるが、今回日本の投手陣(海邉和也、大西泰河、小野寺翔太、八木孔輝)は4人それぞれが「自らの持ち味」を最大限発揮したのはもちろんのこと、日本のストロングポイントである「ボールのキレ」「コントロール」「投球術」を駆使して終始失点を最小限に食い止めた。
 捕手との絶妙なコンビネーションから成る「配球」も見事で、高低・内外角をキッチリ突きながら緩急も織り交ぜる「巧みなピッチング」を展開(※打者の胸元に威力十分のライズボールをズバッと投げ込み、のけぞらせたかと思えば……今度は膝元に球速差のあるチェンジアップを投じ、うまくタイミングを外す! また、アウトコース低めの厳しいコースへ逃げるように落とすドロップボール(カットボール)を見せておいて……今度はインコース高めに跳ね上がるようなライズボール! 相手打者にコース・狙い球を絞らせない!! という、いわゆる『対角線に攻める配球』も冴えていた)。 ″力(球速・球威)で押しまくる″ パワーピッチャー全盛の現代のソフトボールにあって、ボールのキレ・球種の豊富さ・制球力・投球術と「より多くの要素」を盛り込んだ日本投手陣の「ハイレベルなピッチング」は観る者を惹きつけ、唸らせるモノであったと言えるだろう。
 試合結果にも表れているように、今回日本が2点以上取られた試合は初戦のWBSCチーム戦(試合スコア5-2)しかなく、この「投手陣の安定・踏ん張り」が「上位進出の最大の要因」となったことは間違いない。

 打撃においても ″ホームランを量産する″ ような派手さこそないものの、横田将和ヘッドコーチの考え・意図を選手たちが敏感に感じとり、日本らしい「ソツがない打線」を形成していた。
 自身もかつて「男子TOP日本代表」として「2004年第11回世界男子選手権大会 ※現・ワールドカップ」(ニュージーランド・クライストチャーチ)に出場、5番・サードのレギュラーポジションで大会を通じキープレーヤーとなった横田将和ヘッドコーチが今回チームに求めたのは「打席で簡単に三振をしない」「いかに三振をなくしていくか」ということ。
 横田将和ヘッドコーチは大会前に「私が日本代表として世界の強豪に挑んだときもそうでしたが、世界の頂点を競う舞台で ″打って打って打ちまくる″ というのは……やはり難しいものがあります。ここぞの場面での1本が最後必要になってくるのは確かで、そこで自分の理想の打撃ができればベストなのですが…… ″なかなかそうさせてもらえない″ のが現実でしょう」と自身が世界トップレベルの舞台で感じてきたことを述べ、「そういった状況で私自身強く意識していたのは『打席で三振をしない』『とにかく出塁する』ということです。三振を繰り返してしまうと、それこそ打つ手が何もなくなり攻撃側はお手上げ状態になってしまう。クリーンヒットできなくても、しぶとく、泥臭く、打球を確実に前に飛ばしていく。ツーストライクと追い込まれても ″強振からコンパクトに当てる打ち方へシフトする″ とか、そこからいかに粘るかが重要になってきます。日本らしさを活かして!と言うのであればなおのこと『ただでは終わらない』打撃の術を個々が身に付けておかなければなりません」と自らの打撃論も語ってくれたが、その「横田イズム」が日を重ねるにつれチーム全体に浸透。
 打線における個々の役割についても、大会を通じある程度打順を固定したことで各打者が「自分のやるべきこと」を理解・イメージしやすく、出塁する者、つなぐ者、かえす者、試合の状況や展開に応じて各々が「今、求められる最善のチームバッティング」を選択・判断できていた。ヘッドコーチが逐一 ″ここはこうしてほしい″ と言わなくても「選手自らが感じ、動ける(実践できる)チーム」はやはり強い。一発・長打で一気に大量得点! とまではなかなかいかなくても、しぶとく出塁し、コツコツとつないで、1点1点着実に積み重ねていく。その攻撃スタイルを実際に体現させ、今回チームをU23ワールドカップ準優勝へ導いた横田将和ヘッドコーチの功績は大きかったと感じているし、その背景にはヘッドコーチをはじめとするコーチングスタッフと選手たちの「団結」「一体感」があったことを強調しておきたい。

「あと一歩」の差を埋めるために、今後、必要な要素とは ??
国内の戦い・日頃の練習から「世界トップレベル」を意識せよ

 今大会における男子U23日本代表チームの躍動・奮戦ぶりは先に記したように「堂々たるモノ」で、世界に日本の「技術の高さ」(JAPANクオリティ)を示してくれたことはまずもって評価されるべきだろう。しかし、最終的に優勝には、世界一の座には……辿り着くことができなかった。大会期間中の現地レポートでも最後「このU23ワールドカップで得た経験・悔しさをいかにTOPカテゴリーへつなげていくか」と締めくくったが、ここでは再度「日本男子ソフトボールが取り組むべき課題」を整理しておきたい。

 まず、これまで日本のストロングポイントとされてきたボールのキレ・コントロール・投球術を駆使し「U23ワールドカップ準優勝の原動力」となった「投手陣の活躍」は本当に大きかったが、今回のピッチングスタイルや現状のレベルが「そのままTOPカテゴリーで通用するか?」気になるところ。
 例えば、昨年(2022年)の「第17回男子ワールドカップ」(ニュージーランド・オークランド)で彗星のごとく現れ、見事「優勝投手」に輝いた「今、世界でもっとも注目される左腕」ジャック・ベスグローブは当然のようにこのU23ワールドカップでも頂点へ登り詰めた。だが……TOPカテゴリーには現実としてそのジャック・ベスグローブに「痛打を浴びせることが可能」な「世界屈指の強打者たち」が存在している(※昨年のワールドカップ決勝でオーストラリアに敗れはしたが、『破壊力抜群』のカナダ打線は予選ラウンドでジャック・ベスグローブをはじめとするオーストラリア投手陣を攻略。実際、中軸を打つ左打者がジャック・ベスグローブの得意とする ″アウトコースのライズ″ を『引っ張ってライトスタンド上段に叩き込む!』という驚愕の場面もあった)。要は、今、その世界トップレベルの打者とU23日本代表投手陣が対峙して「抑えることができるのか??」ということである。
 そこでポイントに挙げたいのが、今、世界一線級の投手の証ともされている「135㎞/h」の「球速・球威」。日本投手陣のクオリティの高いピッチングは確かに武器・強みとなっていたが、球速・球威という点で見れば120㎞/h後半が精一杯で「一つ劣る部分」であったことは否めない。シビアな見方になってしまうが、130㎞/h台のファストボールに ″対応可能″ な世界の強打者たちにとって120㎞/h台のスピードは ″ちょうど打ちごろになってしまう″ とも考えられ、キレの良いボールでいくら高低・四角を突いたとしても……「最終的につかまってしまうのではないか」とどこか不安を隠せないのが本音なのだ。
 昨年のワールドカップではアルゼンチンのウエムル・マタ、ニュージーランドのダニエル・チャップマン、オーストラリアのジャック・ベスグローブがMAX134㎞/hを計測(※この大会のMAXは134㎞/hだったが、135㎞/h超のファストボールを投げ込める力は十分あると想定している)。TOP日本代表の小山玲央も躍進した「2019年第16回世界男子選手権大会」(チェコ・プラハ)で「MAX135㎞/h」に到達している(※決勝トーナメントのニュージーランド戦、『ライズボール』で叩き出した)が、やはりこの「135㎞/hの球速・球威を有しているか否か」が「世界トップレベルを勝ち上がれるかどうか」の「バロメーター」になっていると考えられ、最終的にその「球速135㎞/hの領域」で勝負できる投手に成長していかないと……「世界の頂点を極める」のは「難しいのではないか」と感じてしまうのである。
 女子ソフトボールで ″世界のエース″ と称されるレジェンド・上野由岐子も、全盛期は「女子では別次元」の「球速120㎞/h超」を連発(※ベテランとなった現在も常時110km/hを超え、ここぞという勝負どころでは115㎞/h超のファストボールまたはウイニングショットを投げ込んでいる)。 ″世界屈指のサウスポー″ としてアメリカ・日本で活躍したモニカ・アボットにおいても「球速120㎞/hに迫る」球威抜群のライズボールが最大の武器であり、世界の頂点を競う舞台で「まず強み」となる「トップレベルの球速・球威」が備わっていた。
 今回の日本投手陣の「技術の高さ」に「もうワンランク上の球速・球威」がプラスされたなら……当然凄みは増し、世界屈指の強打者たちからしても「本当の意味で脅威」となることだろう。現在は投手板の踏み方や投球動作のルールが一昔前に比べ緩和されており(※投手板の踏み方:現行のルールでは、両足を投手板に触れておくか、もしくは軸足を投手板に触れながら自由足を後方(投手板の両端の後方延長線内)に置くことが認められているため、投手板後方に置いた自由足に体重を乗せ、そこから反動をつけて投球するようなセット、投球動作が主流になっている。投球動作:現行のルールでは、リーピング(LEAPING/投球動作を開始し、投手板から蹴り出し、身体全体が空中にある状態)が合法的な投球動作として認められている。上記のような投手板後方に置いた自由足に体重を乗せ、そこから反動をつけて投球するようなセット、投球動作が主流となっており、その勢いで投手板を蹴り、大きくジャンプしながら投げるような投球動作のピッチャーが増えてきている)、日本国内でも120㎞/h後半のスピードボールを投げ込むピッチャーは珍しくなくなった。身体能力をより高めるトレーニング理論(もしくはトレーニング方法)も進化してきており、「投手の130㎞/h超」は今や「未知の領域ではなくなっている」印象すらある。
 あえて繰り返しておきたいが、今大会抜群の安定感を示し、世界のトップを走るオーストラリアとも互角の戦いを演じた日本投手陣の活躍は素晴らしいモノだった。しかし、これがゴール・完成形だとはまだ思えない。今回再確認した日本の「技術の高さ」に、何を、どう、「プラスアルファ」していくか!? 言葉で言うほど簡単じゃないのは百も承知だが……TOPカテゴリーで「世界の頂点に立つ!」ことを念頭に置き、今後も己をさらに磨き、高めていく「貪欲な姿勢」を持ち続けなければならない。

 しぶとく、泥臭く、相手投手に食らいつきながら ″あと1本″ に泣いた「打撃力」の向上も必須。
 こちらも優勝決定戦(オーストラリア戦)現地レポートでまとめたように、「勝負のかかる場面でいかに痛打を浴びせるか」が最重要課題となる。
 課題克服のカギになるのは、やはり「海外特有のストライクゾーン」への対応。そして「ワンランク上の球速・球威があり、変化量も大きい」相手投手のベストボール(ウイニングショット)を「どう攻略するか?」だ。
 シンプルに言うと、海外のストライクゾーンは「アウトコースが広い」傾向にある(※ボール1個分ほど(ときに2個分ほど)広い)。これは間違いなく「投手有利」になってしまうのだが(※国際試合の傾向を知り尽くす世界一線級の投手たちは、要所でその『厳しいコース』を徹底的に突いてくる)……その国際使用のストライクゾーンに「どう対応するか??」が「一つ大きな難題」となっており、昔も今も「打開策を模索し続けている」状況は変わっていない。
 これも投手の課題同様、言葉で言うほど簡単じゃないのは重々承知の上だが……第一に日本国内の戦い・日頃の練習から常に「世界トップレベル」を意識する必要があると感じている。具体的には ″甘い球を気持ち良く打ち、より遠くへ飛ばすこと″ が主になりがちな日本の打撃練習を「難しいコース・不得意な球種を打つトレーニング」にブラッシュアップしていくこと。以前、元・ニュージーランド代表のドニー・ヘイル氏(※ドニー・ヘイル氏はかつてニュージーランド代表(ブラックソックス)の『主力打者』として、1996年第9回大会・2000年第10回大会・2004年第11回大会と世界選手権(現・ワールドカップ)3連覇。2013年第13回大会でも自身4度目の世界一に輝いた母国・ニュージーランドの『英雄』である:現在は女子ニュージーランド代表チームのヘッドコーチも務めている)が「私が日本でプレーしはじめた頃、まず、打撃練習のあり方に『違和感』を感じたことを覚えている。日本ではティーバッティングもフリーバッティングも打者が ″自分の打ちやすいコース・得意な球種″ を要求し ″気持ち良く打つ練習″ を繰り返す傾向があるのだが……実際トップレベルの試合で ″甘い球″ はこない。当然、投手は打者を打ち取りにかかるわけだし、試合の勝負どころでは自らの『ベストボール』を『より厳しいコース』へ投げ込んでくることだろう。大切なのは、そういった『実戦のイメージ』を常日頃(普段の練習から)どれだけ持てるかということ。アウトコースが広く、最後その難しいコースで勝負されるのが分かっているのであれば……そこを『打ち返す術』を練習の段階で身に付け、磨いておかなければならない」と話してくれたことがあるが、この言葉・アドバイスを今こそU23日本代表選手たちに届けたい。
 今大会随所に見られた光景だが、世界の強打者たちは(特に優勝したオーストラリアの打者たちは) ″ただ振り回す″ のではなく、狙うコース・球種を絞り(限定するかのように)、「コンパクトに強くスイングする打ち方」で相手投手に痛打を浴びせていた(※スーパーラウンドの日本 vs オーストラリアで、日本が3回表、この回先頭のオーストラリアの7番 ジェレミー・ガーランド(2020年U18ワールドカップ準優勝メンバー)にレフトスタンドへ先制のソロホームランを叩き込まれたシーンは象徴的であった:大西泰河のやや甘めに入ったベルトあたりの球を強振せず『コンパクト』にとらえ、あの『飛距離』……。驚きの一発でもあった)。
 日本で俗に言う ″マン振り″ (フルスイングをさらに超えるような強振)はどちらかと言うと実戦向きではなく、重要なのは『まず、相手投手が投げ込んでくるボールの軌道に身体がしっかりと向かう』(※ボールのライン・軌道にしっかりと身体を入れていく)こと、その上で『アジャスト』し『強く打ち返す』ことではないかと……再認識させられたのも事実だ(※ ″マン振り″ は ″力いっぱい打ちたい! ″ ″飛ばしたい!! ″ がため、先に前の肩が開いて、胸が見え、 ″横振りするような傾向(横に振り回すような形)″ に陥る可能性がある。これでは実質向かってくるボールとの接点がなくなってしまい、アジャストすることは難しくなる)。
 大会を通じた印象として、今回の日本打線がしぶとく、泥臭く、相手投手に食らいつき「幾度となくチャンスを演出していた」ことは間違いなく、それが一つ大きな収穫であったことは確かだった。あとは「ここぞの場面での1本をいかに出すか」という永遠の難題に対して、具体的に、どう、向き合っていくか!? 理屈や方法をこうして書き連ねるのも手ではあるが、何より「実際に世界の舞台を体感してきた選手たち」がその貴重な経験を伝え(広め)、国内の戦い・日頃の練習から常に「世界トップレベル」を意識することが重要ではないかと切に思う。

男子日本代表の「レガシー」を受け継ぎ、
これからも継続して「チャレンジ」を !!

 2023男子U23日本代表チーム「WBSC第1回男子U23ソフトボールワールドカップ準優勝」の後、これまでの日本男子ソフトボールについて、そしてこれからの日本男子ソフトボールの「世界挑戦」について、先人たちに話を聞くことができた。

 現在、日本女子ソフトボール新リーグ「ニトリ JD.LEAGUE」に所属する豊田自動織機 シャイニングベガで監督を務めている永吉慎一氏(※永吉氏はかつて『男子TOP日本代表』として、今回男子U23日本代表チームのヘッドコーチを務めた横田将和氏とともに『2004年第11回世界男子選手権大会』(ニュージーランド・クライストチャーチ)に出場。3番・セカンドでフル出場し、最後まで諦めることのない『闘志溢れるプレースタイル』でチームを鼓舞し続けた。現・男子U23日本代表/永吉飛斗選手の父親としても知られている)は、その中でも日本代表選手として戦うことの重みや「フォア・ザ・チーム」に徹することの重要性について言及。
 「まずもってソフトボールは『チームスポーツ』ですし、守備においても打撃においても個々に『大切な役割』があり、その役割・責任を全うしなければチームに貢献することはできない……ということを深く認識する必要があると思います。特に日本代表チームは自分の所属チームでは ″中心選手″ ″エースで4番″ といった立ち位置の選手が集まってくるわけですから、実際戦う上で ″難しさ″ がつきまとうものです。私自身も現役時代『男子TOP日本代表』として『日の丸を背負った』ときは、日本代表チームの一員として『チームのために』『日本のために』いかに身を粉にして戦うか!? を心情としてきました」と自らの「世界の舞台で戦った経験」から想いを語ると、「技術的な部分でも、例えば打席に入って ″ただ打つだけ(ただ振るだけ)″ になってしまっては……チームにおける役割・責任を果たすことができません。具体的に言うなら、トップレベルの戦いになればなるほど、試合の状況や展開に応じて『出塁すること・送ること・つなぐこと・かえすこと』を可能にする『打撃の引き出しの多さ』が求められることになる。走者のいる場面でヒットが打てなくても、最低限送ったり、つないだりすることができる。ここぞという得点のチャンスでタイムリーやホームランが打てなくても、最低限打球を外野に運び、犠牲フライで走者を呼び込んだりすることができる。そういった『確かな判断力・能力』を有しているかどうかが……大事な局面で必ず問われることになるのです」とトップレベルの戦いで「個々の選手に必要不可欠とされる要素」を熱く述べてくれた。

 また、近年 ″日本男子ソフトボールの顔″ であり続け、現在は永吉慎一氏と同じく日本女子ソフトボール新リーグ「ニトリ JD.LEAGUE」に所属するシオノギ レインボーストークス兵庫の「新監督」として「指導者の道」を歩みはじめている松田光氏(※松田氏も昨年:2022年まで『男子TOP日本代表』の『投打の大黒柱』として世界選手権(現・ワールドカップ)の舞台に2013年第13回大会から5大会連続で出場。2019年第16回大会では、打っては5割4分5厘(首位打者)・3本塁打・13打点(打点王)、投げては4勝0敗・防御率0.46(防御率1位)の大活躍で、チームを2000年第10回大会以来『19年ぶりの準優勝』に導いた)とも再会。
 永吉氏同様、自身がチャレンジしてきた「世界の頂点を競う舞台」で戦うことの難しさ・厳しさについて聞くと「私は2013年から数えて『5回』世界選手権・ワールドカップの舞台に挑戦させてもらいましたが、正直、前半の ″3回″ は世界の壁の高さ・厚さを痛感させられたというか……『苦しい経験の連続』でした。今でも思い出せますが、2013年に初めて男子TOP日本代表に選出され、ニュージーランドでの世界選手権に挑んだとき、当時ヘッドコーチだった西村信紀さんからバッティングの際 ″海外の投手の高めのライズは、振りにいっても当たらんぞ…… ″ と指摘・忠告されたことがあるんです。まだ青かった(※真の世界トップレベルを体感していなかった)当時の自分は ″いや、そんなことないでしょ!? ″ と実際の試合でブンブン振り回しにかかったのですが……見事に当たらなかった。そうなると、今度は自分を見失ったかのようにバットが振れなくなってしまって……。『このままでは世界で通用しない』ということを身を持って感じたのを覚えています」とまず自身のターニングポイントになった「世界の舞台での苦い記憶」をコメント。続けて松田氏は「でも、その『苦しんだ経験』があったから、そこから逃げることなく、『世界の舞台にチャレンジすることをやめなかった』からこそ……2019年の世界選手権で『準優勝・大会MVP』という結果を残せたのだと思います(※2019年第16回世界男子選手権大会(チェコ・プラハ)、バッティングでは ″高めのライズは当たらなかった″ という自らの実体験を活かし、打ちにいくゾーンを低めに設定。ドロップ系のボールを徹底して狙い打ちし、快打を連発! 見事首位打者&打点王を獲得した!!)。皆さんに納得していただけるような成績を収めるまで、私の場合は3大会(7年)かかってしまいましたが、私自身にとってその時間は決して遠回りではありませんでした。だから、今回の男子U23日本代表チームをはじめ、今、世界に挑戦している選手たちには『絶対に諦めないで!!』と強く言いたいです。自分の思い描いたプレーができず、悩み、苦しんだとしても、その経験を次に活かせばいい。最も重要なのは『己が身を持って知る』こと、その上で考え、工夫し、『チャレンジし続ける』ことだと私は信じています」と世界に挑む選手たちへ「自らの想い・考え」も語り、 ″苦労人・松田光″ ならではの「心からのエール」を送ってくれた。

 日本男子ソフトボールが「世界の頂点」に立つその日まで、男子日本代表の「チャレンジ」は終わらない。何度も繰り返すが、今回のU23ワールドカップ準優勝もあくまで通過点にすぎず、この経験・悔しさを「いかにTOPカテゴリーへつなげていくか」が今後私たちに与えられた「課題」「ミッション」となる。

 プロではなく、オリンピック種目でもない「男子ソフトボール」において ″ソフトボールに人生のすべてを懸ける・捧げる″ ということは……並大抵ではない。社会人になれば当然毎日フルタイムで仕事をするし、家庭を持ちながら、持ち出しも少なくない中で、各々が「ソフトボールと向き合う時間」を確保していかなければならない。やめてしまう、諦めてしまうことはむしろ簡単なことであり、どんなメンタリティで、どうソフトボールに励むかは「すべて自分(その選手)次第」なのだ。

 だが、それでも……私たちは世界に挑戦することをやめたりしない。
 男子日本代表の「レガシー」を受け継ぐ者として、今、ここで諦めることなどできはしないのだ。

 U23からTOPへ、いや、U18→U23→TOPと男子日本代表の「伝統・誇り」を継承し、全カテゴリーで一丸となって「新たな時代」を創造していこうではないか。

 すべては、日本男子ソフトボールの未来のために!
 2023男子U23日本代表チーム「WBSC第1回男子U23ソフトボールワールドカップ準優勝」を「TOPカテゴリーでのワールドカップ優勝」へつないでいけるか否かは、今大会を戦った私たち(世界の厳しい舞台を肌で感じてきた選手・スタッフ)の「これから」にかかっている。

 その大切な「役割・責任」を担っているということを、もう一度ここで……胸に刻みたい。

●文・写真
男子U23日本代表チーム
選手団広報/竹﨑 治(日本体育社)

第1回男子U23ワールドカップ出場選手・スタッフ

選手

No. UN. 守備 氏名 所属 選手情報
1 17 投手 海邉 和也 安川電機
2 16 大西 泰河 Honda
3 19 小野寺 翔太 トヨタ自動車
4 11 八木 孔輝 トヨタ自動車
5 22 捕手 西森 亜夕夢 トヨタ自動車
6 4 本塚 勇太 FSC吉勝重建
7 20 内野手 井上 裕太郎 平林金属株式会社
8 3 大川 竜志 ジェイテクト
9 5 黒岩 陽斗 平林金属株式会社
10 6 永吉 飛斗 旭化成
11 10 濱田 慎 愛媛ウエスト
12 1 松尾 翔輝 デンソー
13 18 宮本 海斗 豊田自動織機
14 9 外野手 菊川 智己 豊田自動織機
15 7 佐藤 光希 トヨタ自動車
16 8 松本 良就 デンソー

スタッフ

No. UN. 役職 氏名 所属
1 - チームリーダー 瀬戸山 章 日本ソフトボール協会
2 30 ヘッドコーチ 横田 将和 埼玉県庁クラブ
3 31 アシスタントコーチ 柳田 信也 東京理科大学
4 32 アシスタントコーチ 亀井 博 豊田自動織機
5 - マネージャー 三谷 舜 中京大学
6 - トレーナー 岡山 雄太 OFFICE COCOCH
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